近年、少子高齢化に伴う労働力不足を背景に、外国人材の雇用を推進する企業が増加しています。
一方で、出入国在留管理庁(入管庁)による在留資格の審査基準や、不法就労に対する罰則は年々厳格化の傾向にあります。
外国人労働者の雇用において、企業には単なる労働力の確保にとどまらず、出入国管理及び難民認定法(入管法)と、労働・社会保険関係法令の双方を遵守する高度なコンプライアンス管理が求められます。
このコラムでは、2026年4月に施行された在留資格「技術・人文知識・国際業務」の必要書類変更や、2027年以降に予定されている税・社会保険料の納付情報の審査反映、さらには2027年6月までに施行される不法就労助長罪の厳罰化など、今後の外国人雇用に直接的な影響を及ぼす重要事項について詳細に解説します。
あわせて、労働関係法令と入管実務の双方に精通する第一綜合グループの社会保険労務士の視点から、企業が平時より講ずべき適法な労務管理体制の構築についてご説明します。
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目次
1. 外国人雇用における在留資格審査の動向とコンプライアンスの重要性
外国人材を雇用する企業において、「入管法」に基づく手続きと「労働基準法や社会保険各法」に基づく労務管理は、制度上密接に連動しています。
出入国在留管理庁が公表している「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」においては、許可を判断する際の考慮要素として「雇用・労働条件が適正であること」や「納税義務を履行していること」が掲げられています。この「雇用・労働条件が適正であること」という要件は、実質的に労働関係法令に適合していることを求めるものです。また、同ガイドライン等に関連する運用として、外国人本人の社会保険への加入状況について、申請時に健康保険証等の提示を求めることで確認を行う仕組みが導入されています 。
(1) 出入国管理行政における「雇用・労働条件の適正性」の審査
かつての審査では、主に「本人がどのような仕事をしているか(職務内容)」が重視されていました。しかし、2019年の改正入管法施行以降、審査の基準は大きく変化しました。職務内容に加えて「雇用主が労働法令を守っているか」「従業員が社会保険料や税金を適切に納めているか」が見られるようになりました。企業が違法な長時間労働を放置したり、法定の社会保険への加入手続を怠ったりした場合、それらが直ちに外国人従業員本人の在留期間更新等の不許可に直結するわけではありませんが、審査における「雇用・労働条件の適正性」に疑義を生じさせる要因となります。
さらに、労働法令違反は企業側が「特定技能」などの受入機関としての適格性を喪失する事態に直結する恐れがあります。経営者および人事担当者は、在留資格申請手続と日常の労務管理を切り離して考えるのではなく、双方が連動した総合的なコンプライアンス体制を構築する必要があります。
特に入管は、厚生労働省や日本年金機構との情報連携を強化しています。「年金は高いから、本人の希望で加入させていない」といった理屈は一切通用しません。
(2) 「受入機関の適格性」が問われる実務環境の到来
入管法における在留資格の付与は、日本の社会に不利益を与えないことが前提です。社会保険に加入せず、税金を滞納する外国人を放置することは、日本の社会保障制度を脅かす行為とみなされます。そのため、雇用主である企業が「適切な労務管理」を行っていない場合、その企業で働く外国人従業員は「日本に在留するにふさわしくない」と判断されてしまうのです。
2.【2026年4月15日施行】在留資格「技術・人文知識・国際業務」の運用厳格化
外国人材の雇用において最も広く活用されている就労ビザ「技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)」について、2026年4月15日以降の申請から新たな要件を追加する運用方針を公表しました。
これは、技人国の資格を有しながら実態として制度が想定していない単純労働等に従事している不適切事案をなくし、専門的・技術的活動としての適正性を担保するための厳格化措置です。
(1) 在留資格の概要と所属機関のカテゴリー区分
技人国の申請手続きにおいては、外国人材を受け入れる所属機関(企業等)の事業規模や社会的な信頼性に応じて、企業を「カテゴリー1」から「カテゴリー4」の4段階に区分し、提出書類を簡略化する運用がなされています。今回の厳格化措置は、主に中小企業が該当する「カテゴリー3」および「カテゴリー4」の企業に適用されます。
【所属機関のカテゴリー区分と2026年4月15日以降の適用有無】
| 区分 | 該当する所属機関の要件 | 2026年4月以降の新要件の適用 |
|---|---|---|
| カテゴリー1 | 日本の証券取引所に上場している企業、国・地方公共団体、独立行政法人など | 対象外(適用なし) |
| カテゴリー2 | 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収税額が1,000万円以上ある団体・個人 | 対象外(適用なし) |
| カテゴリー3 | 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体・個人(カテゴリー2を除く) | 対象(新要件が適用される) |
| カテゴリー4 | 上記のいずれにも該当しない団体・個人(新設企業等) | 対象(新要件が適用される) |
(2) カテゴリー3・4企業に対する「所属機関の代表者に関する申告書」の提出義務
2026年4月15日以降、カテゴリー3または4に該当する企業が技人国の申請(在留資格認定証明書交付申請、変更許可申請、更新許可申請)を行う場合、新たに「所属機関の代表者に関する申告書」の提出が義務付けられます。
この申告書は、企業の代表者自身が外国人従業員の職務内容や雇用条件、受入体制の実態を正確に把握し、適法に雇用していることを宣言するものです。記載内容と就労実態が乖離している場合は虚偽の申請とみなされるリスクがあり、会社側の説明責任と労務管理の適正確保がより強く求められることになります。
(3) 言語能力を用いる対人業務等における「CEFR B2相当」の立証
外国人従業員が「言語能力を用いて対人業務等に従事する場合」において、「CEFR B2相当」以上の言語能力を有することを証する資料の提出が新たに求められます。
入管庁の公式案内では、対象業務の具体例として「翻訳・通訳」や「ホテルフロント業務等の接客」が挙げられています。日本語を用いる業務であれば、客観的な能力証明として以下のいずれかに該当する必要があります。
【CEFR B2相当とみなされる日本語能力の認定基準】
- 日本語能力試験(JLPT)「N2」以上の合格
- BJTビジネス日本語能力テスト「400点」以上の取得
- 日本の大学を卒業していること
- 日本の高等専門学校、または専修学校の専門課程若しくは専攻科を修了していること
- 日本の義務教育を修了し、かつ高等学校を卒業していること
- 中長期在留者として日本に20年以上在留していること
※一般的な「日本語学校(各種学校)」の卒業のみでは、専修学校の修了に該当しないため、別途JLPT N2等の資格取得が求められる点に留意が必要です。
(4) 企業に求められる職務内容の精査と雇用契約書の適正な運用
上記の厳格化に伴い、企業は外国人従業員に従事させる業務内容が、技人国の本来の要件である「専門的・技術的活動」に該当するかを改めて精査する必要があります。
雇用契約書や職務内容説明書において、単純作業と誤認されるような曖昧な記載は避け、修得した専門知識と実際の業務との関連性を論理的に立証できるよう、書面を適切に整備しなければなりません。対人業務の比重が高い場合は、採用要件の段階から語学力の証明書類を確認する運用フローを確立することが求められます。
3. 【2027年6月施行予定】公的義務(税金・社会保険料)の履行状況の審査反映
外国人労働者の在留管理において、今後の実務上大きな影響を与えることが見込まれるのが「公的義務の履行状況」に対する行政の厳格な対応です。
(1) デジタル庁を通じた自治体および入管庁の情報連携システム
政府は、国民健康保険料や国民年金保険料、住民税などの公的義務の不履行を防ぐため、2027年6月を目処に、自治体や厚生労働省が保有する納付・加入状況のデータを、デジタル庁のシステムを通じて入管庁とオンラインで連携させる方針を示しています。これにより、従来は自治体ごとに管理されていた滞納等の情報が、在留資格の更新・変更審査において入管の担当官に自動的に参照される体制が整備される予定です。
(2) 国民健康保険・国民年金の滞納が在留審査に及ぼす影響
税金や保険料の悪質な未納・滞納履歴がある外国人は、原則として在留資格の更新や変更が認められなくなる措置が適用される見通しです。
過去の反復的な滞納履歴が審査記録に残ることで、「公的義務を適正に履行していない」として消極的な評価を受けるリスクが高まるため、企業は外国人従業員に対して公的義務の履行の重要性を指導する体制を構築することが望まれます。
(3) 企業における社会保険の適正加入と、未加入に対する加入指導・通知運用
留意すべきなのは、社会保険の加入要件を満たす事業所において、企業が手続きを怠り未加入となっている場合の取り扱いです。入管庁のガイドラインに関連した政府方針に基づき、外国人の社会保険への加入を促進するための措置が講じられています。
具体的には、在留資格の申請時に窓口で健康保険証等の提示を求め、未加入であることが判明した場合には、地方出入国在留管理局から企業や本人に対する「加入指導」が行われるとともに、当該事実が「管轄の年金事務所等へ通知」される運用となっています 。
入管当局から年金事務所等へ情報連携が行われることで、行政機関からの調査を誘発し、過去に遡って社会保険料の徴収等を受けるリスクが生じます。企業側のコンプライアンス違反は、企業自身の財務に深刻なダメージを与える事態につながります。
4. 不法就労助長罪の厳罰化と企業が負うべき法的責任
外国人を適法に雇用するための対応として、在留資格および就労可否の確認が挙げられます。これを怠った場合の企業側の刑事リスクは、近年の法改正により大幅に強化されています。
(1) 2025年6月施行の入管法改正による法定刑の引き上げ(法人への罰金等)
出入国管理及び難民認定法第73条の2に規定される「不法就労助長罪」は、不法滞在者や、就労が認められていない外国人を雇用した事業主等を処罰する規定です。
2024年6月交付の法改正(2027年6月までに施行)により、この不法就労助長罪の罰則が大幅に強化されました。改正前の「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」から、「5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金」へと厳罰化されます。この罪は、雇用主が「不法就労であることを知らなかった」場合であっても、在留カードの確認を怠るなどの過失があれば処罰の対象となる点に注意が必要です。
(2) 在留カードおよび「指定書(特定活動等)」の厳格な確認義務
企業は採用時において、外国人の在留カードの原本を必ず確認し、就労の可否および就労制限の有無を精査しなければなりません。 特に、「特定活動(ワーキングホリデーやインターンシップ等)」の在留資格を有する外国人を雇用する場合、在留カードの券面の記載だけでは具体的な活動内容の可否が判別できません。必ずパスポートに貼付された「指定書」を確認し、就労活動が明確に許可されていることを事業主として確認し、その記録を保存することが、不法就労助長罪を防ぐ実務上の必須対応となります。
(3) 資格外活動許可(週28時間制限)を超過させた場合の刑事責任
「留学」や「家族滞在」の在留資格を持つ外国人をアルバイトとして雇用する場合、「資格外活動許可」に基づく「週28時間以内(長期休業期間中は1日8時間以内)」という就労時間制限の厳守が法的条件となります。
これを超過して労働させた場合、企業側が不法就労助長罪に問われることとなります。複数の勤務先を掛け持ちしている場合、すべての労働時間を通算して週28時間以内とする必要があるため、採用時のヒアリングと定期的な労働時間の管理体制が求められます。
5. 外国人経営者の「経営・管理」在留資格と企業の労働法令遵守
(1) 事業の適正性および安定性の審査における公的義務履行の重要性
外国人経営者様ご自身が「経営・管理」の在留資格で日本に在留し事業を運営している場合、自社の労働・税務法令の遵守状況は、経営者自身の在留期間更新における重要な審査項目の一つとなります。
出入国在留管理庁の審査要領等において、事業所としての社会保険・労働保険の適用義務の履行、および源泉所得税・法人税等の納付状況は、「事業の適正性および安定性」を判断するうえでの基礎資料として位置付けられています。
公的義務の不履行(未納や滞納)がある場合、事業の継続性に疑義があると判断され、更新が不許可となるリスクがあります。
(2) 法定要件を満たす事業所における社会保険・労働保険の加入義務
法人(株式会社や合同会社等)を設立している場合、代表者1名の企業であっても健康保険および厚生年金保険の強制適用事業所となります。
また、従業員を1名でも雇用した場合は労働者災害補償保険(労災保険)の加入義務が生じ、所定の要件を満たす場合は雇用保険への加入も必要です。
経営者自身の適法な事業継続を維持するためにも、各種保険関係の成立手続および保険料の適正な納付は不可欠な要件となります。
6. 平時における適法な労務管理体制の構築
在留資格の更新の審査や、労働基準監督署による調査に耐えうる企業体質を作るためには、日常的な「予防法務」に基づく自主的な労務環境の整備が重要です。
(1) 労働条件通知書の多言語対応と2024年4月法改正への適合
採用時に労働条件を明示する「労働条件通知書(雇用契約書)」は、労使間の認識の齟齬を防ぐ基礎となる書面です。
2024年4月施行の労働基準法施行規則改正により、すべての労働者に対して「就業場所および業務の変更の範囲」の明示が義務付けられ、有期契約労働者には「更新上限の有無等」の記載が必須となりました。
最新の法令に適合した書面を整備し、実際の労働条件と在留資格が許容する活動範囲に矛盾が生じないようすり合わせを行う必要があります。 また、外国人労働者に対しては、本人が内容を十分に理解できるよう、母国語や英語を併記するなどの実務的配慮が推奨されます。
(2) 労働時間の客観的把握による未払い賃金トラブルの防止
厚生労働省が策定した労働時間の適正な把握に関するガイドラインにおいては、労働時間の記録はタイムカードやパソコンのログといった「客観的な記録」を基礎として行うことが原則とされています 。
自己申告制に依存した勤怠管理は、労働基準監督署の調査において証拠能力が乏しいと判断されるリスクが高く、推計に基づく未払い残業代の支払指導を受ける原因となり得ます 。
例えば、クラウド勤怠管理システム等を導入し、適法な時間管理と残業代の支給を行うことが、企業のリスクを低減する方法となります。
7. まとめ:社会保険労務士・行政書士等との連携によるリスク管理
外国人労働者の適正な雇用管理は、出入国管理行政の求める審査基準を満たすとともに、労働関係法令を遵守するという多角的な責任を伴うものです。
2026年の技人国ビザの要件厳格化や、2027年の税・社会保険料未納に関する情報連携の開始、および不法就労助長罪の厳罰化など、企業を取り巻く法規制はかつてないスピードで高度化・複雑化しています。
これらの課題に対して、自社の人事部門のみで法改正のすべてを把握し完全に対応することは実務上容易ではありません。「労働・社会保険の実務(労働関係法令)」を専門とする社会保険労務士と「在留資格に関する手続き(入管法)」を専門とする行政書士が連携する体制を活用することが、企業にとって有効なリスクヘッジとなります。 第一綜合グループには社労士事務所・行政書士事務所があり、連携を密に取っております。
法令違反が顕在化して行政処分や刑事的責任を問われる事態となる前に、平時からの労務監査とコンプライアンス体制の構築に向け、外国人雇用管理に精通した専門家へご相談いただくことをご検討ください。
この記事の監修者
社会保険労務士法人第一綜合事務所
社会保険労務士 菅澤 賛
- 全国社会保険労務士会連合会(登録番号13250145)
- 東京都社会保険労務士会(登録番号1332119)
東京オフィス所属。これまで800社以上の中小企業に対し、業種・規模を問わず労務相談や助成金相談の実績がある。就業規則、賃金設計、固定残業制度の導入支援など幅広く支援し、企業の実務に即したアドバイスを信念とする。