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人事労務コラム

助成金

公開日:2025.06.01

最終更新日:2025.06.01

人材開発助成金で事業拡大!リスキリング支援を徹底解説

人材開発助成金で事業拡大!リスキリング支援を徹底解説

人材開発支援助成金は,従業員のスキルアップを支援し,事業競争力を高めるために有効となる助成金制度です。本コラムでは人材開発助成金の事業展開等リスキリング支援コースについて解説します。

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1.人材開発支援助成金とは?

近年,事業の多角化やDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応が求められる中で,人材育成の重要性はますます高まっています。

しかし,社員のスキルアップには研修費用や人的リソースの確保が必要であり,多くの中小企業にとっては大きな負担となり得ます。そこで活用したいのが,厚生労働省が支給する「人材開発支援助成金」です。

1-1.助成金の概要と目的

人材開発支援助成金は,企業が雇用する労働者に対して,職務に必要な専門的スキルや知識を習得させる訓練を実施した場合に,その費用や賃金の一部を助成する制度です。

この助成金の主な目的は,以下の3点です。

  • 労働者の職業能力の向上を支援すること
  • 生産性向上や業務改善など,企業全体のパフォーマンスを底上げすること
  • 成長分野への人材移動やリスキリングを促進すること

たとえば,ITスキルの習得,管理職向けのリーダーシップ研修,製造現場での新設備対応研修など,実務に直結する訓練が対象となります。

この制度を活用することで,企業は人材育成にかかるコストを大幅に削減でき,従業員にはキャリアアップの機会を提供できるという,まさに「企業と従業員の双方にとってメリットのある制度」と言えるでしょう。

1-2.人材開発支援助成金のコースについて

人材開発支援助成金には,さまざまなコースが用意されており,企業のニーズに合わせて活用できます。以下,7つのコースがあります。

コース名目的
人材育成支援コース職務に必要な専門知識・技能を従業員に習得させること
教育訓練休暇等付与コース有給の教育訓練休暇制度を導入し,従業員が訓練を受けられる環境を整備すること
人への投資促進コースデジタル人材や高度専門職の育成を支援すること
事業展開等リスキリング支援コース​新規事業の立ち上げや業務のDX推進に伴うスキル開発を支援すること
建設労働者認定訓練コース建設業で必要な資格取得や技能向上を支援すること
建設労働者技能実習コース​若年層や未経験者への建設技能の習得支援
障害者職業能力開発訓練コース障害者が働きやすい環境で職業能力を開発できるよう支援すること

自社の状況に合わせて適切なコースを選択し,人材育成計画を立てましょう。

引用:厚生労働省サイト「人材開発支援助成金」

2.事業展開等リスキリングコースについて

事業環境が急速に変化する中で,企業には新たな成長戦略として「事業再構築」や「デジタルトランスフォーメーション(DX)」などが求められています。これらを支える鍵となるのが,従業員のリスキリング(学び直し)です。

こうした背景のもと,「事業展開等リスキリング支援コース」は,令和4年度から令和8年度までの期間限定で創設されました。

2-1.助成金の対象となる訓練

人材開発支援助成金の対象となるものは,「事業内訓練」と「事業外訓練」の2つに分類されています。

ここで言う「訓練」とは,いわゆる職業訓練のような実技を学ぶものだけでなく,座学の研修形式のものも含まれます(本コラムでは総称として「訓練」と表記します)。

事業内訓練

企業が自社内で実施する訓練で,以下の形式が対象となります。

  • 社外講師による訓練
    外部講師を招き,自社で企画・主催・運営する訓練
  • 社内講師による訓練
    社内の専門人材が指導する,企業内で完結する訓練
  • 認定職業訓練
    企業が独自に認定を受けて実施する職業訓練

事業外訓練

企業外部の教育機関などで実施される訓練で,以下が該当します。

  • 公共職業能力開発施設
    国や自治体が運営する公的な訓練施設
  • 職業能力開発総合大学校等
    高度な職業訓練を提供する専門教育機関
  • 認定職業訓練施設
    厚生労働大臣の認定を受けた教育施設
  • eラーニングや通信講座
    オンライン形式の学習も対象となり,柔軟な受講が可能

いずれの訓練形式でも,訓練時間は合計10時間以上であることが条件です。また,業務とは切り離したOFF-JTで実施する必要があります。企業の実情や従業員の特性に応じて,無理なく学べる訓練方法を選択することが重要です。

2-2.助成金の対象となる費用

人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)では,訓練にかかる「訓練費用」と,訓練期間中に支払う「賃金助成」の2つが助成対象となります。

訓練費用(経費助成)

以下のような費用が助成対象となります。

  • 講師への謝金・謝礼
  • 講師や受講者の旅費・交通費
  • 使用する教材費や会場費
  • 訓練に必要な受験料・検定料
  • その他,訓練に付随する合理的な経費

※企業が独自に実施する社内訓練はもちろん,外部教育機関を利用した場合の費用も含まれます。

賃金助成(訓練中の賃金補助)

訓練が所定労働時間内に実施された場合,対象従業員に対して支払う賃金の一部が助成されます。訓練時間が時間外や休日であった場合は,原則として賃金助成の対象外です。

2-3.助成金の支給額

助成額・助成率は次の表のとおりです。

経費助成75%(60%)
賃金助成(1人1時間あたり)1000円(500円)

※( )内は大企業の助成額・助成率となります。
※引用:厚生労働省「人材開発支援助成金」

なお,支給額には限度額が次の通り定められています。

経費助成限度額

1人1訓練当たりのOFF-JTにかかる経費助成の限度額となります

企業規模10時間以上100時間未満100時間以上200時間未満200時間以上
中小事業30万円40万円50万円
大企業事業20万円25万円30万円

定額制サービスによる訓練の場合は1人1月当たり2万円が上限となります。

賃金助成限度額

1人1訓練当たり1,200時間が限度時間となります。
ただし,専門実践教育訓練については1,600時間が限度時間となります。

支給に関する制限

助成対象となる訓練等の受講回数は,1労働者あたり1年度で3回が上限となります。
1事業所が1年度に受給できる助成額は1億円が上限
となります。

3.助成金の申請方法

ここでは,申請に必要な書類と申請手順について解説します。必要書類と手順をしっかりと確認しながら助成金の支給申請を進めていきましょう。

3-1.申請手続きの流れ

人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の申請は,事前準備から訓練終了後の申請まで複数の順序があります。以下の流れに沿って,計画的に進めましょう。

① 職業能力開発推進者の選任

まず,事業所ごとに「職業能力開発推進者」を1名以上選任します。この推進者は,訓練の企画・実施,従業員への相談対応など,能力開発の中心的な役割を担う人物である必要があります。

② 事業内職業能力開発計画の策定

自社の人材育成の基本方針や訓練方針を明確にした「事業内職業能力開発計画」を作成します。この計画を通じて,企業の経営層と従業員が共通認識のもとに人材育成を推進でき,社員のモチベーション向上にもつながります。

※作成後は,対象従業員への周知・共有を必ず行いましょう。

③ 職業訓練実施計画届の提出

訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に,都道府県労働局へ「訓練実施計画届」を提出します。
なお,提出は雇用保険適用事業所単位でも,本社一括でも可能です。

④ 訓練の実施

届け出た計画に基づき,対象従業員に対して訓練を実施します。
内容・方法・時間数など,事前に届け出た計画通りに進めることが重要です。

⑤ 支給申請書の提出

訓練が終了したら,翌日から2か月以内に労働局へ支給申請書類一式を提出します。
必要書類には訓練実績を証明するもの,賃金支払記録などが含まれます。

⑥ 審査と支給決定

労働局により支給審査が行われ,支給/不支給の決定がなされます。審査には一定の時間を要するため,余裕のあるスケジュール管理が重要です。

※不明点があれば,早めに都道府県労働局または社労士等の専門家に相談しましょう。

3-2.申請に必要な書類

助成金の申請には,多くの書類が必要になります。不足が無いように綿密に準備を行いましょう。また,訓練実施前に計画届の提出と訓練実施後の支給申請時の2つの時期に提出が必要となる書類があるので分けて紹介します。

訓練実施前

  • 職業訓練実施計画届
  • 事業展開等実施計画
  • 対象労働者一覧
  • 事前確認書
  • 訓練内容が確認できる書類(訓練カリキュラム・受講案内等)
  • 訓練内容により提出が必要となる書類(OFF-JT講師要件確認書や教育訓練機関との契約書等)

支給申請時

  • 支給要件確認申立書
  • 支払方法・受取人住所届(既に口座を登録している場合は不要)
  • 支給申請書
  • 事業所確認書(中小事業主のみ)
  • 経費費用の内訳
  • 訓練実施結果報告書
  • 対象労働者の雇用契約書又は労働条件通知書の写し
  • 対象労働者の賃金台帳及び出勤簿

これらの書類は,厚生労働省のウェブサイトからダウンロードできます。 申請前に情報を確認し,必要書類を準備しましょう。

3-3.申請の注意点

人材開発支援助成金の申請を確実に進めるためには,事前準備だけでなく,申請時のルールや注意点の把握が必要です。以下に特に重要な点を説明します。

① 申請期限を厳守する

助成金は申請期限を1日でも過ぎると受理されません。
特に支給申請は「訓練終了日の翌日から2か月以内」と定められており,遅延は原則認められないため,社内でのスケジュール管理を徹底しましょう。

また,電子申請を活用すれば,閉庁日や時間外でも手続きが可能です。確実な提出のために,電子申請の導入も検討しましょう。

② ほかの助成金が支給されないことがある

助成金や補助金には「併給調整」という仕組みがあります。
同一の訓練・費用・賃金を対象に,複数の公的支援制度へ申請した場合,いずれか一方しか支給されないケースが多いため,事前に各助成金の要綱やQ&Aを確認し,必要に応じてハローワークや都道府県労働局などの管轄窓口に相談しましょう。
特に,他の厚労省系助成金や自治体独自の補助制度と重複しないよう注意が必要です。

③ 制度改正の有無をチェック

人材開発支援助成金は,年度ごとに要件や対象訓練が変更される可能性があります。
例えば,助成率や支給上限額が見直されることもあるため,申請前には必ず厚生労働省の公式サイトや都道府県労働局・ハローワークで最新情報を確認してください。

3-4.よくある質問と回答

助成金の申請にあたり,多くの企業が疑問に感じるポイントをQ&A形式で解説します。

Q. 申請の対象となる事業主は?
A.雇用保険適用事業所の事業主が対象です。
加えて,訓練中の適正な賃金支払い(割増賃金含む)や労務管理体制の整備が求められます。


Q. 助成金を受給できない事業主には,どのようなケースがありますか?
A.過去5年以内の不正受給,労働保険料の滞納,直近1年以内の労働法令違反がある事業主は申請できません。
不正時には全額返還だけでなく,支給額の20%が違約金として追加でかかります。


Q. 訓練期間中に従業員の転勤が発生した場合,助成対象になりますか?
A.同一法人内の事業所であれば,転勤後も助成対象となります。
ただし,訓練計画の変更が必要な場合は,事前に労働局へ相談しましょう。


Q. 派遣社員や契約社員も対象になりますか?
A.一定の条件を満たす有期雇用労働者や派遣社員も対象となります。ただし,対象となるには以下が必要です。
 ・雇用保険に加入していること
 ・訓練期間終了後も継続的に雇用される見込みがあること
 ・事前に訓練計画に含められていること

契約更新が前提となっているか,雇用見込みを明示できるかが判断のポイントです。


Q. 途中で訓練を中止した場合,助成金はどうなりますか?
A.訓練が予定どおり完了しなかった場合,助成金の一部または全額が不支給となる可能性があります。
やむを得ない事情がある場合は,その内容を記録・証明できる書類とともに労働局へ報告し,対応方針を確認するようにしましょう。

4.まとめ

人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の活用には,正確な制度理解と丁寧な準備が欠かせません。本コラムでは,申請対象や助成対象となる人材の範囲,転勤・中止時の扱い,不支給となるリスクなど,企業がつまずきやすいポイントを解説しました。制度を正しく理解し,安心・確実な申請を目指しましょう。

社会保険労務士法人第一綜合事務所でもご相談を受けており,ご相談をいただいた際には弊社スタッフが一丸となって対応をさせていただきます。本記事が,貴社における企業成長の一助となれば幸いです。

この記事の監修者

社会保険労務士法人第一綜合事務所
社会保険労務士 菅澤 賛

  • 全国社会保険労務士会連合会(登録番号13250145)
  • 東京都社会保険労務士会(登録番号1332119)

東京オフィス所属。これまで800社以上の中小企業に対し、業種・規模を問わず労務相談や助成金相談の実績がある。就業規則、賃金設計、固定残業制度の導入支援など幅広く支援し、企業の実務に即したアドバイスを信念とする。

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