
深刻な人手不足が続く中,多くの企業が「外国人労働者の雇用」という選択を視野に入れています。しかし,外国人雇用には言語や文化の違い,在留資格の管理,法令遵守など,特有の課題が伴います。こうした課題に適切な策を講じずに雇用を始めてしまうと,トラブルの発生や行政指導,最悪の場合は不法就労助長などの処罰を受けることにもつながりかねません。本コラムでは,外国人雇用における課題を取り上げ,企業が取るべき実践的な対策,成功事例,そして押さえておくべき関連法規について,外国人雇用に強い社労士の視点から詳しく解説していきます 。
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1.外国人雇用を取り巻く現状
慢性的な人手不足が続く日本では,近年,外国人労働者の雇用は,企業にとってひとつの選択肢となりつつあります。本章では,企業が直面している労働環境とその背景を見ていきましょう。
1-1.日本の労働力不足の現状
日本では少子高齢化が進行し,生産年齢人口(15〜64歳)の減少が続いており,特に中小企業や地方の企業では深刻な人手不足が常態化しています。こうした背景のもと,外国人労働者の採用に消極的であった国内の中小企業も,積極方針に転換せざるを得ない状況となっています。
在留外国人数の推移(令和6年末時点)
- 総在留外国人数:3,768,977人(前年末比427,985人増,12.8%増)
- 中長期在留者数:3,494,954人
- 特別永住者数:274,023人
主な国籍・地域別 在留外国人数(令和6年末時点)
- 中国:844,187人
- ベトナム:600,348人
- 韓国:411,043人
- フィリピン:332,293人
- ブラジル:212,325人
- ネパール:206,898人
- インドネシア:173,813人
- ミャンマー:110,306人
- 台湾:67,277人
- アメリカ:64,842人
在留資格別 在留外国人数(令和6年末時点)
- 永住者:902,203人
- 技能実習:425,714人
- 技術・人文知識・国際業務:394,295人
- 留学:368,589人
- 家族滞在:283,204人
出典:出入国在留管理庁「令和6年末現在における在留外国人数について」
1-2.外国人労働者の推移
近年,特定技能制度の創設や技能実習制度の運用見直しなどの法整備が進み,外国人が日本で就労する環境が整いつつあります。
最新統計(令和6年10月末時点)
外国人労働者数:
2,048,675人(前年比 +225,950人(+12.4%))
※統計開始(平成19年)以来,過去最多を更新
外国人を雇用する事業所数:
318,775か所(前年比 +19,985か所(+6.7%))

国籍別(上位5か国)
- ベトナム:518,364人
- 中国:397,918人
- フィリピン:206,050人
- ネパール:145,617人
- インドネシア:121,328人

在留資格別分類
専門的・技術的分野の在留資格:
572,804人(前年比 +11.6%)
例:技術・人文知識・国際業務,高度専門職など
技能実習:
404,316人(前年比 −3.6%)
※制度の見直し議論が進み減少傾向
特定技能:
208,556人(前年比 +62.3%)
※導入からわずか数年で急増中
身分に基づく在留資格:
582,604人(前年比 +3.8%)
例:永住者,日本人の配偶者等,定住者など
出典:出入国在留管理庁「令和6年末現在における在留外国人数について」
厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ(令和6年10月末現在)」
外国人雇用の伸びを牽引しているのは「特定技能」制度です。即戦力となる人材の確保を目的とした制度であり,特に建設,外食,介護などの人手不足業種で急速に活用が進んでいます。
1-3.外国人雇用に関する法律
外国人を雇用する際には,日本人の採用とは違う視点で法的・制度的配慮が求められ,企業は在留資格の確認や各種届出の実施など,多岐にわたる対応が必要となります。社内制度の不備や,制度の誤解があると,企業自身が行政処分や罰則の対象になる可能性もあるため,しっかりポイントを押さえていきましょう。
関連する主な法律・制度
出入国管理及び難民認定法(入管法)
外国人の入国・在留・退去に関するルールを定めた法律です。
企業が外国人を雇用する際には,適切な在留資格の取得・活動内容との一致・在留期間の管理など,入管法に基づいた運用が求められます。外国人を不当に働かせてしまった場合などに適用される「不法就労助長罪」が定められているのも入管法です。
労働基準法
働く人の労働時間,休憩,休日,賃金,解雇等,労働条件の最低基準を定めた法律です。
外国人,日本人問わず労働者はこの法律の保護を受ける対象であり,長時間労働や未払賃金などがあれば,企業は処罰の対象となります。
最低賃金法
都道府県ごとに定められた最低賃金を下回る給与の支払いを禁止する法律です。
国籍や在留資格に関係なく,日本国内で働くすべての労働者に適用されます。最低賃金以下の賃金支給は明確な法令違反となり,企業に罰則が科されることもあります。
職業安定法・雇用対策法
雇用に関する公正な取り扱いや,労働市場の安定を目的とした法律です。
企業は外国人を雇用した場合,氏名・在留資格・雇用形態等の情報を厚生労働省へ届け出る義務があります。届出を怠ると行政指導や是正指導の対象になる可能性があります。
1-4.企業が直面する現場での課題とトラブル事例
外国人を雇用する企業が直面しやすい課題は,書類や制度面だけではありません。現場で起こるトラブルの多くは,コミュニケーションや文化の違いに起因するものも多くあり,企業内の体制整備や意識改革も必要です。
現場で多発する課題とトラブル事例
言葉の壁によるミス・事故
- 作業指示が十分に伝わらなかったことによる誤操作や安全管理ミスの発生
- 報告や相談遅れによって問題が拡大するケース
文化・価値観の違い
- 時間感覚や報連相(報告・連絡・相談)といった習慣の違いから,職場内のトラブル発生につながるケース
- 上司や年上への接し方,または男女間の価値観の違いから,誤解や対立が生じるケース
差別的対応や無意識の排除
- 「外国人だから」という理由のみで,特定の業務に固定したり,会議や社内行事から外すといった対応をしてしまい,不満や孤立につながったケース
- SNSでの不用意な発言や冗談が,人種差別的と受け取られ,問題発生につながったケース
労働条件の不整備
- 日本語の雇用契約書のみで契約したものの,外国人労働者本人が内容を十分に理解できていなかったことに起因した労使間トラブルの発生
- 残業代未払いや長時間労働などが原因で,労働基準監督署や労働局に相談される事例
在留資格と業務内容の不一致
- 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で雇用したにもかかわらず,同在留資格では認められていない単純作業(検品・清掃など)を担当させたことで,労使ともに処罰されるケース
- 「留学」「家族滞在」などの原則就労不可の在留資格を持つ人に,許可なく労働をさせた結果,入管法違反とみなされたケース
企業が外国人雇用を成功させるためには,法令遵守はもちろん,多様性を受け入れる企業文化の醸成や,実務レベルでの教育・管理体制の整備が欠かせません。
2.外国人雇用にまつわる各種課題と対策
この章では,採用から在留資格,労働条件,コミュニケーション,生活支援,そして定着支援まで,外国人雇用における主要課題とその解決策を社労士が解説していきます。
2-1採用:求人方法と面接のポイント
外国人雇用を行うための第一歩は,「自社に適した人材の採用」です。採用の段階でミスマッチが起こると,早期離職や職場トラブルにつながるリスクがあります。
【外国人労働者の採用ポイント】
①求める人物像や必要なスキル・日本語能力を明確に定義しましょう。
- 求人を載せる際には,多言語対応の求人媒体を活用することもおすすめです。
- 求人票には仕事内容や給与,ビザのサポート有無,日本語能力の要件などを具体的に記載し,安心して応募できる環境を整えます。
②面接では,経歴だけでなく以下を確認しましょう。
- 日本語力
- 異文化適応力(異文化への許容があるかどうか)
- 長期就労の意欲
③その他ポイント
- 母国語での資料準備や,簡単な日本語を話すなど,リラックスして本来の力を発揮できるような配慮も大切です。
- 労働条件や福利厚生は,誤解を防ぐためにも多言語で説明し,きちんと理解を得たうえで採用を進めましょう。
2-2.在留資格(ビザ):ビザの種類と注意点
外国人を雇用する際には,適切な在留資格(ビザ)を確認し,ルールに沿った手続きを行う必要があります。代表的な就労可能なビザは以下のとおりです。
主な就労系在留資格の特徴
①技術・人文知識・国際業務ビザ
事務・企画・エンジニアなどの専門職を雇用する場合
就労系の代表格とされるビザです。自然科学・人文科学分野に関する知識や,外国人ならではの国際感覚を活かして業務に従事する外国人を受け入れるための制度です。一般的なホワイトカラー業務が多く該当します。
【例】技術職(SE,機械設計,開発など),事務系専門職(企画,マーケティング,経理,総務等),通訳・翻訳,語学講師,貿易,デザイナー 等
②特定技能ビザ
人手不足が深刻な16分野(建設,介護,農業など)で,即戦力となる外国人を受け入れる制度です。
試験による技能評価や日本語能力の確認が必要で,これまで認められていなかった分野での労働も認められる点が特徴です。
【例】介護職,建設業,外食業,製造業,宿泊業,ビルクリーニングなど
③技能ビザ
「熟練した技能」を要する伝統的・専門的職種に対して設けられたビザです。
職人技や伝統文化的技術を持つ外国人が対象であり,学歴よりも経験・実績が重視されます。
【例】中華料理などの専門調理師,貴金属・宝石細工職人,家具職人,パイロット,動物調教師,ソムリエ,スポーツのインストラクターや外国特有の建築技術者
④高度専門職ビザ
高度な専門性を持ち,日本社会に対する貢献が期待される外国人を受け入れるためのポイント制ビザです。
永住申請要件の短縮や配偶者の就労許可など,多くの優遇措置があります。
【例】博士号保持者での研究職・大学教員,年収の高いITエンジニアや管理職,高度なプロジェクトマネジメント経験を持つ人材,スタートアップ創業者・経営者(高スコア取得時)等
⑤企業内転勤ビザ
海外の親会社・子会社・関連会社などから,日本の拠点に一時的に社員を異動させるためのビザです。
職務内容は「技術・人文知識・国際業務」と同様ですが,海外勤務経験者の異動が条件です。
【例】海外の営業所から日本本社に異動した者,海外の親会社から日本の子会社に転勤となった者
【注意点】
- ビザの種類によって,就ける仕事や更新要件が大きく異なる
- 実際の業務内容と在留資格の不一致は不法就労助長罪に問われるリスクあり
- 手続きは煩雑なため,行政書士等の専門家の関与が望ましい
- 有効期限,更新時期,就労制限などを人事部門で一元管理する体制整備が必要
外国人本人も制度に詳しいとは限らないため,企業側の担当者も定期的に知識のブラッシュアップを行い,引き続き適切にサポートすることが求められます。
2-3.労働条件:労働基準法の遵守
外国人労働者を受け入れる際にも,日本の労働法は当然適用されます。労働条件を明確にし,法令を遵守することで,トラブルを未然に防ぎ,外国人労働者にとって安心して働ける環境を整えることができます。
よくある課題
- 賃金水準が日本人従業員よりも低い水準にしている
- 不適切な労働条件(長時間労働,残業代未払いなど)
- 社会保険の未加入や,福利厚生が未整備
- 外国人労働者本人が労働条件を理解していない(言語の壁のため)
対策ポイント
賃金・待遇の明確化
最低賃金以上を確保し,日本人と同等の待遇を基本とします。残業・深夜・休日労働には割増賃金を必ず支給しましょう。
適正な労働時間管理
週40時間・1日8時間の原則を守り,休憩・休日も法令通りに確保する必要があります。勤務時間管理はタイムカード等で明確に記録しましょう。
社会保険の適用
条件を満たす場合は,健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険への加入が必須です。
多言語での労働条件通知書・契約書の提供
日本語に不安がある場合は,母国語や,やさしい日本語で内容を伝える工夫が重要です。
制度や権利の説明を丁寧に
外国人労働者は,日本の労働法制度になじみがないことも多いため,入社時研修や面談で就業ルールを丁寧に説明しましょう。
2-4.コミュニケーション:言語教育と異文化理解
外国人労働者との円滑なコミュニケーションは,業務効率の向上はもちろん,定着率や職場の雰囲気にも直接的に影響します。言語の壁や文化の違いによるミスや誤解を防ぐためには,企業側の積極的な取り組みが大切になります。
よくある課題
- 日本語が通じず,作業ミスやトラブルが一定頻度で発生する
- ビジネスマナーや報連相といった文化の違いから円滑なコミュニケーションが図れない
- 孤立感を抱えた外国人労働者が多く,長期定着しない
対策ポイント
日本語教育の支援
業務に必要なレベルに応じて,以下のような支援を検討しましょう
- 外部の日本語学校との提携・紹介
- 社内での会話練習・簡単な教材提供
- 通勤時間などを活用したオンライン学習の推奨
異文化理解研修の導入
日本のビジネス慣習や生活文化を紹介する研修を実施することで,摩擦やすれ違いを減らすことができます。また,社員側が外国人の文化背景を理解する研修も効果的です。
翻訳・通訳ツールの活用
日常業務や連絡手段として,翻訳アプリや多言語対応の社内チャット,掲示板ツール等を柔軟に取り入れましょう。
定期的な1on1・面談の実施
言葉や文化の違いに配慮したうえで,仕事や生活の悩みを聞く時間を設けることで,信頼関係の構築と離職リスクの軽減につながります。
2-5.生活支援:日常生活の支援と相談窓口
外国人労働者が日本で安心して働くためには,職場だけでなく「生活の安定」も欠かせません。住居や地域生活への支援が不十分だと,慣れない環境で孤立してしまいストレスの原因となり,早期離職につながるリスクがあります。
よくある課題
- 住居物件が見つからない・契約できない(保証人がいない・外国人NG物件が多い)
- ゴミ出しや病院の利用など,日本の生活習慣が分からない
- 困りごとを相談できる場所がない
対策ポイント
住居支援の整備
- 社宅の提供や賃貸契約のサポートを行う
- 保証会社の紹介や不動産会社との連携する
- 入居時の契約書や注意事項を多言語で案内する
生活オリエンテーションの実施
- ゴミ出しのルール,電車やバスの使い方を伝える
- 病院の探し方や緊急連絡先を用意しておく
- 防災や行政手続きのマニュアルを作成する
- 動画やイラストを使った分かりやすい説明を用意する
相談窓口の設置
- 社内に外国人専用の相談担当を配置する
- 外部の多言語対応NPOや専門家(行政書士,弁護士など)との連携を図る
- 匿名でも相談しやすいフォームやLINEでの相談窓口を設ける
生活面のサポート体制が整っていると,外国人労働者の満足度・安心感が高まり,職場への定着やモチベーションにも良い影響を与えます。採用後の「生活支援」も,人事戦略の一環として,しっかりと対応しましょう。
2-6.定着支援:キャリアパスと教育,評価制度
せっかく採用した外国人労働者も,短期間で離職してしまっては意味がありません。長期的に活躍してもらうためには,入社後の「定着支援」がとても重要です。そのポイントを見ていきましょう。
よくある課題
- キャリアパスが明確でないことに不安を感じる外国人労働者が多い
- 気軽に相談できる相手が職場におらず,孤立している外交人労働者の姿をよく目にする
- 人事評価に対する納得考えられない
対策ポイント
キャリアパスの明示
- 昇進・昇給の仕組みや,スキルアップに必要なステップを分かりやすく提示する
- 資格取得支援や社内研修制度もモチベーション向上に有効です
メンター制度の導入
- 入社初期のサポート役として,経験豊富な社員を1人つける
- 仕事の相談だけでなく,生活面の悩みにも寄り添える存在をつくる
公平な評価制度の整備
- 成果・行動・態度をバランスよく評価する指標を設定する
- 評価結果は定期的にフィードバックし,本人の納得感を高める
外国人労働者にとって「ここで長く働きたい!」と思える職場づくりを考え,制度だけでなく,現場の声に耳を傾けることも意識しましょう。
3.成功事例と失敗事例
ここでは,業種別に外国人雇用に成功した例・失敗してしまった例とその後の対策をご紹介します。それぞれのポイントを整理しながら一緒に見ていきましょう。
3-1.企業の成功事例
成功事例①: 製造業 A社「定着支援と文化理解の徹底」
課題
慢性的な人手不足を解消したい
対応
- 特定技能人材を採用し,入社前から日本語教育・生活支援を実施
- 母国語マニュアルの整備,定期的な個別面談を実施
- 表彰制度や多国籍懇親会を導入し,国籍を超えた交流の機会を創出
成果
職場への順応が早く,離職率が低下。技術の標準化・チーム力も向上
ポイント
外国人労働者を“労働力”ではなく“人材”として捉える姿勢を重要視する
成功事例②: IT企業 B社「多様性が生み出す競争力」
課題
高度なスキルを持つグローバル人材の確保
対応
- 高度専門職の外国人エンジニアを採用し,英語も社内の共通言語に設定
- リモート勤務やフレックスタイムを導入し,柔軟な働き方を推進
- 対象国出身者を現地市場の顧客対応に活用し,事業展開と直結
成果
プロジェクト成功率の向上,海外事業の拡大に貢献
ポイント
採用を“経営戦略の一環”として捉え,活躍の場を整えた
成功事例③:介護施設 C社「資格支援とキャリア形成の支援」
課題
介護職における人材不足
対応
特定技能の外国人を受け入れ,日本語・介護技術の定期研修を実施
国家資格取得の支援,明確なキャリアパスを提示
成果
モチベーションが向上し,長期定着。サービス品質も安定
ポイント
単なる労働力確保でなく,「育てる」視点を持った
3-2.失敗事例に学ぶ注意点と回避策
事例①: 建設業 D社「準備不足が生んだ早期離職」
問題点
- 入社後のフォローがなく,外国人労働者が日本語指示を理解できず現場が混乱
- 定期面談やフィードバックの機会がなく,不満が蓄積
結果
1年以内に半数以上が離職
教訓
採用前後のサポート体制と継続的な対話の重要性
事例②:飲食業 E社「慢性的な法令違反体質がもたらす企業存続の危機」
問題点
- 最低賃金以下の支払い,過度な長時間労働
- 労働基準法や入管法への無理解・軽視
結果
労働者からの訴えがSNSで拡散し,企業イメージが大きく失墜
教訓
コンプライアンスを軽視する体質は,企業の存在価値を失う
事例③:小売業 F社「文化への無関心が職場の分断を招く」
問題点
十分な研修がないまま配属され,日本人従業員との摩擦が発生
外国人労働者に対する偏見を助長するような空気が放置されていた
結果
外国人スタッフの士気が下がり,人間関係も悪化
教訓
多文化共生への理解不足は,組織力の低下を招く
以上,成功した企業では,準備と計画に基づいた採用と支援体制が整備されていたり,異文化の理解を前提とした職場づくり,そしてキャリア支援と公平な評価制度があることが特徴として挙げられます。
一方で,失敗した企業では,サポート体制の欠如や法令の軽視,外国人を単なる労働力としか見ていなかったこと等が特徴として見て取れます。
外国人雇用の成否は,制度の活用とともに「人を理解しようとする姿勢」が問われます。
4.専門家の活用による外国人雇用のサポート
た外国人雇用で失敗しないためには,正確な情報に基づき改善を図ることはもとより,専門家等によるサポートを活用することも有効です。外国人雇用に関連する法律や制度は複雑かつ変化も多いため,社内担当者だけで判断せず,専門家の支援を受けることも検討しましょう。
4-1.専門家によるアドバイス
外国人雇用における課題は多岐にわたるため,以下のような分野ごとの専門家の知見を取り入れることが重要となります。
社会保険労務士(社労士)
- 労働保険・社会保険の手続き全般
- 外国人労働者向けの就業規則整備
- 助成金の活用提案や申請支援
社内体制の整備や,長期定着化を目的とする場合に有効です。
行政書士
- 在留資格の申請・更新・変更手続きの代行
- 入管法への対応アドバイス
- 外国人のライフサポートに関する書類手続き
就労ビザや特定技能など,ビザに関する業務は行政書士の独占業務です。
弁護士
- 労働契約・就業規則の法的チェック
- 労務トラブルや訴訟への対応
- 外国人労働者の権利保護に関する助言
トラブルが起きた際や,解雇・ハラスメント問題が関係する場合に依頼するケースが多いです。
各専門家の役割を明確に理解し,必要に応じて連携をとることで,より安心かつ,効率的な外国人雇用を行うことができます。第一綜合グループでも,国際業務を専門とした社労士と行政書士が在籍しており,案件によっては他士業等とも連携しながらサポートして参りますので,お気軽にご相談ください。
5.まとめ
本コラムでは,外国人雇用の現状から,企業が直面する具体的な課題とその対策,成功・失敗事例,そして専門家の活用方法までをご紹介してきました。
日本では,少子高齢化と人材不足の深刻化により,外国人労働者の受け入れは今や多くの企業にとって欠かせない選択肢となっています。しかし,単に“労働力”として迎えるのではなく,一人ひとりを「人材」として理解・尊重する姿勢がなければ,雇用はうまく機能しません。
功企業の共通点は,制度や手続きの整備だけでなく,“外国人と一緒に成長しよう”という社内のマインドセットが根付いていることにあります。本コラムが,貴社の外国人雇用推進のご参考となれば幸いです。