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公開日:2026.04.22

最終更新日:2026.04.22

労働基準監督署から是正勧告書が届いたら?無視するリスクと正しい是正報告書の書き方

労働基準監督署から是正勧告書が届いたら?無視するリスクと正しい是正報告書の書き方

労働基準監督署からの突然の立ち入り調査(臨検)を受け、手渡される「是正勧告書」。初めて目にする経営者様や担当者様が、「これからどうなるのか」「逮捕されるのではないか」と不安になるのは無理もありません。

しかし、落ち着いてください。是正勧告は正しく対応すれば、会社の労務環境を健全化する絶好の機会になります。逆に、放置や無視は、取り返しのつかない経営リスクを招きます。

このコラムでは、是正勧告書の法的性質から、指摘されやすい違反項目、そして正しい「是正報告書」の書き方まで、社会保険労務士の視点で分かりやすく解説します。また、外国人経営者の方や、外国人を雇用する企業様への注意点についても触れています。ぜひご確認ください。

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1. 労働基準監督署の「是正勧告書」とは?無視するリスクと法的性質

(1)是正勧告に法的拘束力はないが「無視」は厳禁な理由

是正勧告書とは、労働基準監督官が調査の結果、労働基準法などの違反を確認した際に交付する文書です。これ自体に直接的な法的拘束力(強制力)はなく、「これを受け取ったら即逮捕」というわけではありません。あくまで「法律違反を自発的に直してください」という行政指導の一種です。落ち着いてどの条文に違反しているのかを冷静に確認することが第一歩です。

(2)放置すると「送検・社名公表」の刑事事件に発展するリスク

しかし、「法的拘束力がないなら放っておこう」と考えるのは極めて危険です。是正勧告を無視し続けたり、虚偽の報告をしたりすると、労働基準監督官は「悪質」と判断し、以下のような重大なリスクを招く可能性があります。違反の内容が著しく悪質である場合は強制捜査・送検に至ることもあります。

放置・無視による重大リスク

  1. 社名公表
    厚生労働省のホームページ等で企業名が公表されることがあり、取引先との関係や採用活動に重大な悪影響を及ぼす恐れがあります。
  2. 書類送検
    労働基準監督官が「司法警察員」として検察庁に事件を送致する可能性があります。

(3)【外国人経営者・雇用主様へ】自身の在留資格への影響

(4)【外国人を雇用されている企業様へ】労働法と入管法を包括した慎重な対応を

2. 是正勧告で指摘されやすい労働基準法違反トップ3

順位違反項目主な指摘内容
第1位(19,848事業場)労働時間(第32条)法定労働時間(原則1日8時間、週40時間)を超える違法な時間外労働や、36協定の限度時間を超える残業など
第2位(18,784事業場)割増賃金(第37条)残業代(時間外・休日・深夜労働の割増賃金)の未払い、計算間違い、サービス残業など。
第3位(14,250事業場)労働条件の明示(第15条)労働契約を結ぶ際に、書面等で労働時間や賃金などの重要な労働条件を明示していないことなど。

第1位:労働時間(第32条)― 36協定の遵守と把握

最も多いのが「長時間労働」です。単に残業時間を減らすだけでなく、客観的な記録(打刻など)と自己申告に乖離がないか厳しくチェックされます。36協定を締結せず残業させた場合はもちろん、36協定を締結していても、その上限を超えていれば即座に是正対象となります。

※36協定…法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて残業をさせる場合、または法定休日に労働させる場合に、労使で合意し、労働基準監督署へ届け出なければならない協定のこと。

原則: 月45時間、年360時間

特別条項: 臨時的な事情がある場合、年720時間以内、複数月平均80時間以内(休日労働含む)、月100時間未満(休日労働含む)まで延長可能

第2位:割増賃金(第37条)―未払い残業代の清算

「手当に含んでいるから大丈夫」と考えて固定残業代を運用しているケースは危険です。就業規則への記載があやふやであったり、実際の残業時間が固定分を超えているのに追加支払いをしていないケースが指摘されます。また、毎年の最低賃金改定に伴う計算単価の見直し漏れや、管理監督者の範囲設定の妥当性(名ばかり管理職)も厳しく精査されます。

第3位:労働条件の明示(第15条)― 労働条件通知書の見直し

2024年4月の法改正により、労働者に示すべき労働条件の項目が拡大されました。全ての労働者に対して「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が新たに義務化されています。また、有期契約労働者に対しては「更新上限の有無と内容」「無期転換申込機会」「無期転換後の労働条件」の明示が必要です。古いフォーマットを使い続けていると、この項目で法令違反を指摘されることになります。

以上がトップ3でした。あとには「年次有給休暇(第39条)」12,648事業場、「就業規則(第89条)」10,457事業場と続きます。

年次有給休暇に関しては2019年の法改正以降、「従業員が申請して休むもの」から「会社が計画的に休ませるもの」へと性質が変わっています。10日以上の有給が付与される全従業員に対し、付与から1年以内に5日を消化させなければなりません。注意しましょう。

就業規則に関しては、常時10人以上の労働者がいる場合は作成し、法改正や制度変更があれば見直し、従業員に周知しなければなりません。

この章ではどのような法令違反で労働基準監督署から是正勧告がなされるのかを見てきました。次の章では是正勧告書が届いてからの動き方を説明します。

3. 期限厳守!「是正報告書」の正しい書き方と提出のポイント

(1)是正報告書に記載すべき「3つの柱」

是正勧告を受けたら、指定された期日までに「是正報告書」を管轄の労働基準監督署へ提出しなければなりません。監督官が納得する報告書には、以下の3つの要素が必要です。

  • 過去の清算:まず「未払い分をいつ、いくら、誰に支払ったか」という事実を客観的に記述します。
  • 原因の分析:違反が起きた主観的な理由(知らなかった等)ではなく、制度上の欠陥を客観的に認識し、過ちをがある場合は認めます。
  • 再発防止策:属人的な対応ではなく、具体的な解決策(運用方法の見直し,勤怠管理システムの導入、就業規則の改定など)を策定します。

(2)添付資料の必要性

是正報告書に添付すべき主な資料

  • 過去に遡って未払い賃金を支払った際の「賃金台帳」および「振込明細書」の写し
  • 新しく作成・変更した「就業規則」や「36協定」の写し
    ※「労働基準書の受付印(受領印)がある控えのコピー」を添付します。報告書を出す前に、先に届出を済ませておきましょう。
  • 正しい打刻が行われていることがわかる「タイムカード」などの勤怠実績の記録
    ※「是正後」の直近1ヶ月分程度を添付します。手書き修正が多いと正確性に疑義が生じるため、勤怠システムの打刻など客観的な記録である方が望ましいです。

(3)提出期限に間に合わない場合の対処法

「指摘箇所が多く、期限までに支払いや計算が終わらない」という事態は実務上よくあります。その場合は、必ず期限前に監督官へ連絡し、現在の進捗と遅れる理由を誠実に(どこまで進んでいて、なぜ遅れているのか、いつまでにできるのか)伝えてください。無断遅延は極めて心証を悪くします

(4)是正後に待ち構える「再監督」

是正報告書が受理された後、数ヶ月〜1年後に「本当に守られているか」の確認調査(再監督)が入ることがあります。ここで再び同様の法律違反が露呈した場合、「行政指導を無視した悪質な企業」とみなされ、前述した送検等のリスクが高まります。いつ調査に来られても揺るがない体制を築き上げることが不可欠です。

4.自分で対応するリスクと社会保険労務士に依頼するメリット

(1)不用意な回答が「別の違反」や「追加調査」を招く

自力で対応しようとして、監督官との面談で「うちは昔からこうだった」「他社もやっている」といった反論をするのは逆効果です。法律の趣旨を理解しない場当たり的な回答が矛盾を生み、全従業員へのヒアリングなどさらに深い調査を招くケースも少なくありません。

(2)算定根拠の精査と適正な支払いの確定

「未払い賃金」の清算を求められた際、労働時間を正確に精査することは非常に重要です。社会保険労務士が介入することで、法定の除外賃金や実労働時間を計算し,法的に支払い義務がある金額を正確に算出します。これにより、法令を遵守した誠実な対応で行政の信頼を得つつ、計算間違いによる不正確な支払いを防ぐことが可能です。

(3)是正を機に「労務トラブルに強い組織」へアップデート

是正勧告は、いわば「会社の健康診断」で異常が見つかった状態です。社労士など専門家のサポートを受けながら就業規則や勤怠管理体制を根本から整備することで、将来の未払い残業代請求訴訟といった損害リスクを未然に防ぐことができます。

まとめ:労基署対応はスピードと正確性が命。まずは社労士に相談を

労働基準監督署からの是正勧告は、経営者にとって大きなストレスですが、決して「終わり」ではありません。最悪の事態を防ぎ、会社を健全な軌道に乗せるためには、以下のステップを踏むことが重要です。

  1. 是正勧告書の内容を正確に把握する
  2. 無視せず、誠実に改善の意思を示す
  3. 客観的な証拠を揃え、期限内に是正報告書を提出する

このプロセスを適法かつ確実に行うために、「何から手をつければいいか分からない」「監督官とどう話せばいいのか不安だ」と感じた際は、手遅れになる前に社会保険労務士などの専門家へご相談されることをお勧めいたします。

貴社の状況に合わせた最適な解決策を、プロの視点でアドバイスしてもらうことが可能です。

この記事の監修者

社会保険労務士法人第一綜合事務所
社会保険労務士 菅澤 賛

  • 全国社会保険労務士会連合会(登録番号13250145)
  • 東京都社会保険労務士会(登録番号1332119)

東京オフィス所属。これまで800社以上の中小企業に対し、業種・規模を問わず労務相談や助成金相談の実績がある。就業規則、賃金設計、固定残業制度の導入支援など幅広く支援し、企業の実務に即したアドバイスを信念とする。

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