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公開日:2026.07.09

最終更新日:2026.07.09

【2026年10月予定】106万円の壁が撤廃?社会保険適用拡大に伴うパートの労務管理と企業の対策

【2026年10月予定】106万円の壁が撤廃?社会保険適用拡大に伴うパートの労務管理と企業の対策

パートタイマーやアルバイトなど、短時間労働者の人材確保は多くの中小企業にとって重要な課題です。その中で、「配偶者の扶養の範囲内で働きたい」という労働者の意向により、特定の年収額を超えないように労働時間を抑えるいわゆる「年収の壁」は、企業の人手不足の一因として指摘されています。
こうした状況の中、2025年6月に成立した年金制度改正法により、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入要件が見直される見込みです。これまでは「月額8.8万円(年収換算で約106万円)」という賃金基準が社会保険加入の一つの指標でしたが、この「106万円の壁」が撤廃される方向です。さらに、企業規模要件(従業員数51人以上)についても、2035年までに段階的に縮小・撤廃されるスケジュールが示されています。
具体的な施行日は法律上「公布から3年以内の政令で定める日」とされていますが、厚生労働省の公式案内等においても2026年10月にこの賃金要件を撤廃する予定であることが明記されています。企業としては、すぐにも2026年10月の施行に向けた制度対応を進めていく必要があります。
本コラムでは、2026年10月に予定されている法改正の具体的な内容や、社会保険料の負担見込み、外国人雇用の観点を交えた労務管理上の留意点について解説します。

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1.2026年10月予定:「106万円の壁(賃金要件)」が撤廃へ

短時間労働者に対する社会保険の適用拡大は、これまで主に企業の従業員数(厚生年金被保険者数)を基準とした「企業規模要件」を段階的に引き下げる手法で進められてきました。
しかし、予定されている改正では、加入要件の指標であった「月額賃金8.8万円以上(年収約106万円)」という要件が撤廃されます。
以下の表は、現行の加入ルールと改正後のルールの比較です。

要件項目現行の基準(2026年9月まで)改正後の基準(2026年10月予定)
週の所定労働時間20時間以上20時間以上(変更なし)
月額賃金(年収)8.8万円以上 (年収約106万円)撤廃 (金額にかかわらず対象)
勤務期間の見込み2ヶ月を超えて見込まれること2ヶ月を超えて見込まれること(変更なし)
学生であるか否か学生は原則対象外※夜間・通信制の学生や、各種学校等(一部の日本語教育機関など)の留学生は対象となる場合あり  学生は原則対象外※夜間・通信制の学生や、各種学校等(一部の日本語教育機関など)の留学生は対象となる場合あり (変更なし)
従業員数厚生年金被保険者数が51人以上厚生年金被保険者数が51人以上(※段階的撤廃予定)

政府がこの賃金要件の見直しを行う背景には、最低賃金の上昇があります。すべての都道府県で最低賃金が1,016円以上となったことから、週20時間働くだけで月額賃金要件(約8.8万円)を自然に満たすことになり、金額基準を設ける必要性が薄れました。そのため、厚生労働省からも2026年10月に同要件を撤廃する予定であることが告知されています。

なお、すべての短時間労働者が対象となるわけではありません。
改正後は「賃金要件」がなくなり、「週の所定労働時間が20時間以上」「2ヶ月を超える雇用見込みがある」「学生ではない(一部例外を除く)」という要件を満たした場合に、社会保険の加入対象と判断されることになります。

管理指標の「時間ベース」への移行と実務上の留意点

この改正により、シフト管理の指標は「金額(月額8.8万円未満)」から「時間(週20時間未満)」へと移行します。
実務上、「週20時間」の判定に関する留意点は以下の通りです。

実務での盲点:週20時間判定の注意点チェック

  • 契約書と実態の乖離: 雇用契約書上は「週19時間」としていても、慢性的な人手不足から日常的に残業が発生し、実態として「週20時間以上」の勤務が常態化している場合、行政調査(年金事務所の総合調査など)で「実態として要件を満たしている」と判断され、過去に遡って社会保険への加入を指導される(数年分の保険料を追徴される)リスクがあります。
  • 「週20時間」の計算方法: 1週間の所定労働時間は、就業規則や雇用契約書で定められた時間を基準とします。1ヶ月単位の変形労働時間制などを採用している場合は、「1ヶ月の総所定労働時間 ÷ 1ヶ月の週数(4.33週など)」で計算した1週間あたりの平均時間が20時間以上であるかで判定します。
  • シフト制労働者の算定基準: 月ごとにシフトを組む労働者の場合、雇用契約締結時点で週平均20時間以上になることが見込まれる場合は加入義務が生じます。契約書に「週20時間程度」といった曖昧な記載をすることは避ける必要があります。
  • 外国人パート・アルバイトの在留資格:「家族滞在」や「永住者」「日本人の配偶者等」といった在留資格(ビザ)を持つ外国人パートタイマーは、「日本の学生」ではないため、日本人パートと全く同じ条件が適用されます。「外国人だから社会保険は関係ない」という思い込みは禁物です。
  • 外国人留学生の扱い:留学生は原則として社会保険の対象外(学生除外)ですが、学校教育法上の「各種学校」等の扱いとなる「日本語教育機関」などに通う留学生は、社会保険の学生除外の対象外となる場合があります。そのため、週20時間以上働けば、日本人と同様に社会保険の加入義務が発生します。在留資格が「留学」であっても、学校の種別まで正確に確認しておかなければ、年金事務所の調査で過去に遡って保険料を追徴されるリスクがあります。

2.企業規模要件の段階的撤廃(2027年〜2035年)

社会保険の適用要件の一つである企業規模要件(厚生年金被保険者数51人以上)についても、段階的に引き下げられ、最終的には全面撤廃されるスケジュールが示されています。
2026年5月時点での適用拡大スケジュールの見通しは以下の通りです。

実施時期企業規模要件(厚生年金被保険者数)
2026年10月51人以上
2027年10月「36人以上」へ基準引き下げ
2029年10月「21人以上」へ基準引き下げ
2032年10月「11人以上」へ基準引き下げ
2035年10月「10人以下」へ基準引き下げ (全面撤廃)

2026年現在50人以下の規模で適用対象外となっている企業であっても、数年以内には順次、社会保険の加入義務化の対象となります 。人材の採用競争力および定着率の観点からも、制度改定を見据えた対応が求められます。

3.外国人パート・アルバイトの適用要件と労務管理

外国人パートタイマーやアルバイトの雇用においては、外国人労働者特有の労務管理上の留意点があります。
原則として、社会保険の加入要件を満たす労働者であれば、国籍を問わず社会保険の被保険者となります。ただし、日本に在留する外国人には在留資格による就労時間の制限が存在するため、入管法上の制限と社会保険の加入要件を管理する必要があります。

(1)在留資格ごとの社会保険適用と就労時間の関係

代表的な在留資格ごとに、社会保険適用の有無と就労時間の制限を整理しました。

在留資格の種類週の就労時間制限
(入管法)
社会保険の加入義務
(要件を満たした場合)
労務管理上の留意点
永住者・定住者・日本人の配偶者等制限なし
(日本人と同じ)
義務あり日本人パートタイマーと同じ基準で社会保険が適用されます
家族滞在原則週28時間以内
※資格外活動許可が必要
義務あり留学生ではないため「学生除外」の対象とならず、加入要件を満たせば義務が生じます
留学
(大学・専門学校等の昼間部)
原則週28時間以内
※資格外活動許可が必要
原則対象外
(学生除外)
昼間部の正規生は「学生」にあたるため、社会保険は対象外となります
留学
(日本語教育機関などの各種学校等)
原則週28時間以内
※資格外活動許可が必要
義務あり
(要確認)
留学生であっても、学校の種別(各種学校など)によっては社会保険の学生除外の「対象外」となります。日本人・外国人を問わず加入要件の確認が必要です 。

(2)外国人労務管理の留意点

「家族滞在」の在留資格を持つ外国人などを雇用する場合、入管法に基づく資格外活動許可の範囲は、原則として「週28時間以内」です 。一方で、改正後の社会保険加入基準の目安は「週20時間以上」となります。
対象となる外国人を社会保険に加入させた上で雇用を継続するためには、「週20時間以上、かつ週28時間以内」という範囲内で労働時間を適切に管理する必要があります。シフト増による週28時間超過は入管法違反となりますのでご留意ください。

また、「留学生」と一括りにせず、各種学校などの扱いとなる日本語教育機関など、学校の種別によっては社会保険の学生除外の対象とならないケースがあるため、学生証等で正確に確認することが推奨されます。

4.社会保険料の会社負担の目安

法改正により新たに社会保険の適用対象者が拡大した場合、会社負担分の社会保険料(健康保険、厚生年金保険、介護保険、子ども・子育て拠出金等)が発生します。
なお、社会保険料の会社負担割合は、加入する健康保険組合の保険料率(都道府県等により異なる)や、従業員の年齢(40歳以上は介護保険料が加わる)などによって変動します。

以下の試算は目安としてご参照ください。一般的に、会社負担分の社会保険料率は給与総額の約14.5%〜15.5%程度となります。

【試算目安】時給1,100円、週20時間(月80時間=月給88,000円)のケース

項目金額の目安
1人あたりの月額給与(時給1,100円×月80時間)88,000円(年収約105.6万円)
会社負担の社会保険料(月額)
※約15.5%(介護保険含む)で試算
約13,640円
1人あたりの年間負担増(概算)約16.3万円

対象となる従業員数に応じた年間負担額の目安は以下の通りです。

パート従業員数1人あたり月額負担増の目安年間負担増の目安
10名約13,640円約163万円
30名約13,640円約490万円
50名約13,640円約818万円

対象となる従業員数に応じて社会保険料の会社負担額が増加するため、事前に概算を把握しておくことが推奨されます。

5.負担軽減に向けた助成金等の活用

保険料負担を軽減する制度として、助成金等の活用が挙げられます。
なお、助成金制度は年度ごとの予算や法改正によって名称や要件、支給金額が変更される可能性があります。ここでは2026年5月現在の制度の例を解説します。実際の活用にあたっては最新の制度内容をご確認ください。

(1)キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース)

パートやアルバイトなどの短時間労働者に対して、週の所定労働時間を延長し、あるいは賃金の増額を組み合わせて新たに社会保険に加入させた事業主に対して支給されるのが「短時間労働者労働時間延長支援コース」です。

対象労働者を新たに社会保険に加入させ、所定の期間継続雇用した場合に、延長した時間や賃金の増額率、企業の規模に応じて助成金が支給されます 。また、複数年(最大2年)にわたり計画的に取組を実施するメニューも用意されています 。

短時間労働者労働時間延長支援コースの要件と助成額(1人あたり)

取組段階実施要件小規模企業
(30人以下)
中小企業
(31人以上)
大企業
1年目の
取組
以下のいずれかを実施

① 週5時間以上の時間延長

② 週4時間以上〜5時間未満延長 + 賃金5%増額

③ 週3時間以上〜4時間未満延長 + 賃金10%増額

④ 週2時間以上〜3時間未満延長 + 賃金15%増額
50万円40万円30万円
2年目の
取組
以下のいずれかを追加実施

① 週2時間以上の時間をさらに延長

② 基本給をさらに5%以上増額

③ 昇給、賞与、退職金制度のいずれかを新規適用
25万円20万円15万円
最大
受給額
(1年目と2年目の取組を両方満たした場合)75万円60万円45万円
※制度変更により要件や金額が見直される場合があります

(2)【2026年10月導入予定】保険料調整制度(3年間の負担軽減特例)

これまで「社会保険適用促進手当」などの暫定措置が設けられていましたが、2026年10月の法改正施行に合わせ、より抜本的な支援策として「保険料調整制度」が創設される予定です。
本来、社会保険料は事業主と従業員が50%ずつ(労使折半)負担する仕組みですが、この特例制度を利用することで、企業側が法定の折半割合を超えて従業員負担分を肩代わり(追加負担)することが可能になります。

  • 対象者:短時間労働者として新たに加入する従業員のうち、標準報酬月額が126,000円以下の被保険者
  • 支援内容:事業主が従業員に代わって追加負担した保険料分について、その全額が制度全体(国)から支援されます
  • 期間:最長3年間

この制度を利用することで、従業員の手取り減少(いわゆる働き控え)を防ぎながら、企業は負担を抑えつつ円滑に社会保険へ移行させることが期待できます。

6. 企業の実務対応手順(チェックリスト)

法改正に向けた実務対応の手順を以下のチェックリストにまとめました。

実務対応チェックリスト

ステップ実施事項具体的な行動内容
STEP 1現状の把握と対象者のリストアップ自社の全パート・アルバイト(外国人スタッフを含む)の就業実態(週の所定労働時間など)を確認し、法改正後に「週20時間以上」等の基準に該当する従業員を特定する。
STEP 2コストシミュレーションの実施リストアップした対象者が全員社会保険に加入した場合、会社負担となる社会保険料等が年間でいくら増加するかを目安として試算する。
STEP 3従業員への意向調査と個別面談対象従業員に対し、法改正の内容を説明し、「加入して労働時間を延ばすか」「加入を避けて週20時間未満に抑えるか」の意向を確認する。
STEP 4方針の決定と助成金の活用検討会社の業務に必要な総労働時間と従業員の意向を踏まえ、助成金や保険料調整制度等の要件を確認し、対応方針を決定する。
STEP 5就業規則および雇用契約書の見直し社会保険の加入基準変更に伴い、就業規則の関連条文を改定する。また、新たな労働時間や賃金条件に基づき、従業員と雇用契約書(労働条件通知書)を結び直す。

なお、社会保険料の会社負担を回避する目的で、従業員の合意を得ずに会社が一方的に契約時間を引き下げることは労働条件の不利益変更にあたるため、適切な手続きを経る必要があります。

7. 労務管理に関するご相談社労士法人第一綜合事務所に

「106万円の壁(賃金要件)」の撤廃や企業規模要件の段階的撤廃により、企業は人事労務管理の見直しが求められます。

外国人従業員を雇用する企業においては、労働関係法令に加え、入管法(在留資格ごとの就労制限)に関する知識も必要となるため、適法な労務管理体制を整備することが重要です。

社会保険労務士法人第一綜合事務所では、国際業務に特化した行政書士法人第一綜合事務所とのグループ内での連携を活かし、社会保険の適用拡大に向けた試算から、助成金申請代行、雇用契約書の作成、就業規則の改定までをサポートを行っています 。 さらに、国際業務に特化した知見をもとに、外国人材のビザ手続きと連動した適法な労務管理など、外国人雇用に特有の課題にも対応いたします。

自社の社会保険料負担の目安や、従業員への対応方針、助成金の活用要件など、実務に関するご相談については、初回の無料相談をご利用ください。貴社に適した労務管理体制の構築をご支援いたします。

この記事の監修者

社会保険労務士法人第一綜合事務所
社会保険労務士 菅澤 賛

  • 全国社会保険労務士会連合会(登録番号13250145)
  • 東京都社会保険労務士会(登録番号1332119)

東京オフィス所属。これまで800社以上の中小企業に対し、業種・規模を問わず労務相談や助成金相談の実績がある。就業規則、賃金設計、固定残業制度の導入支援など幅広く支援し、企業の実務に即したアドバイスを信念とする。

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