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人材ビジネス

公開日:2025.09.22

最終更新日:2025.09.22

人材紹介とは? 労働者派遣との違いと事業化のポイントを解説!

人材紹介とは? 労働者派遣との違いと事業化のポイントを解説!

「人材紹介と労働者派遣はどう違うの?」このような疑問を持つ企業の採用担当者や,これから人材紹介事業に参入したい方も多いのではないでしょうか。
実はこの2つは,法律上の位置づけや契約の仕組みが大きく異なり,必要な許可や運用ルールもまったく別になります。人材紹介(有料職業紹介)は職業安定法,労働者派遣は労働者派遣法に基づき厳格な許可制度のもと運営されており,事前の理解が大切になります。
本コラムでは,企業の人事担当者や人材ビジネスを検討する方向けに有料職業紹介(人材紹介)の基本から,労働者派遣との違い,許可申請の基礎知識まで詳しく解説します。

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1.人材紹介とは? 法的な位置づけと仕組み

「人材紹介(有料職業紹介)」とは,求職者と求人企業との間に立ち,職業のあっせん(マッチング)を行うサービスを指します。この事業は「職業安定法」に基づき,厚生労働大臣の許可を受けた事業者のみが実施できる「有料職業紹介事業」として位置づけられています。

紹介事業者は,求人企業から紹介手数料を受け取り,求職者とは直接の雇用関係を持ちません。求職者と求人企業との間で直接雇用契約が成立する点が,大きな特徴です。

1-1.人材紹介(有料職業紹介)の定義

有料職業紹介事業は,「職業安定法 第4条」において次のように定義されています。

「求人者の申し込みに応じ,求人者と求職者との間における雇用関係の成立を斡旋する行為」

紹介事業者は,求職者の希望とスキル,企業の求人内容や条件をマッチングし,雇用成立に至るまでの支援を行うことがその役割です。

紹介事業者は,求人企業から「紹介手数料」を受け取る(通常,求職者からは徴収不可)り,雇用契約は「求人企業と求職者」の間で直接締結されます。

求人企業 ⇔ 紹介事業者 ⇔ 求職者 という「三者関係」が基本構造となります。

1-2.労働者派遣との違い

労働者派遣との最大の違いは,「誰と誰の間に雇用契約が成立するのか」という点です。

人材紹介労働者派遣
雇用契約求職者と雇用した企業の「直接雇用」派遣元と労働者は「雇用」関係派遣先と労働者は「業務指揮」関係
法律職業安定法労働者派遣法
指揮命令関係雇用した企業が行う派遣先企業が行う
紹介手数料の支払先企業から紹介事業者に雇用する人材の紹介に対する料金として支払い派遣先から派遣元に,労務提供に対する料金として支払い
雇用関係の期間原則として常用雇用※契約社員や正社員など(直接雇用)派遣契約期間に応じた派遣就労
社会保険等の責任雇用した企業が負う派遣元事業主が負う

人材紹介は「採用のためのマッチング支援」,労働者派遣は「就労そのものの提供サービス」という位置づけです。

法律・許可制度・責任関係が全く異なるため,企業側としては 自社のニーズに応じてどちらを活用するか正しく理解して選択しましょう。

2.人材紹介事業を行うための基礎知識

人材紹介事業(有料職業紹介事業)を始めるには,法律で定められた許可を取得し,適正な運営体制を整える必要があります。

許可を取らずに事業を行うと無許可事業(職業安定法違反)として罰則の対象になるため,事前に基礎知識を押さえておきましょう。

この章では,必要な許可と申請手続きや紹介契約の流れと仕組みについて解説します。

2-1.必要な許可と申請手続き

人材紹介事業(有料職業紹介)を行うには,職業安定法第30条に基づき,厚生労働大臣の「有料職業紹介事業許可」を取得する必要があります。

申請は都道府県労働局を通じて行います。

申請の流れ

①事前相談(任意)

労働局へ事前相談を行う(推奨)。

②申請書類の準備・提出

申請書・事業計画書・添付書類を提出。

③審査(概ね1~2か月程度)

書類審査・必要に応じて補正指示あり。

④許可証の交付

条件を満たせば許可証が交付され,事業開始が可能。

※ 許可の有効期間は,新規取得後3年間,更新後5年間です。有効期間経過後は,更新申請が必要になります。

許可取得の主な要件

要件内容
事業所要件独立した事務所スペースの確保が必要。賃貸契約書の写しや登記事項証明書の提出が求められます。
資産要件基準資産額が「500万円×事業所数」以上であること。または,現金・預金「150万円+(事業所数−1)×60万円」があること
役員・責任者の適格性欠格事由(破産・禁錮刑など)がないこと。職業紹介責任者講習を受講した者を配置すること。
社内規定の準備個人情報保護・苦情処理体制などを整備し,社内規程として明文化すること。

2-2.人材紹介契約の流れと仕組み

人材紹介事業では,求人企業との契約(紹介契約)と,求職者とのやり取りという2つの流れを同時に進めます。

ここでは,企業との契約の仕組み・紹介手数料の扱いなど,実務の流れを整理します。

企業との契約(紹介契約)

紹介事業者は,求人企業と「有料職業紹介契約」を結びます。この契約には主に次のような内容を盛り込みます。

主な契約内容内容例
紹介手数料の額・算定方法年収の〇%,定額制など
紹介後の雇用形態正社員,契約社員,パートなど
支払時期雇用契約成立時,入社確認後,試用期間満了後など
返戻規定(返金規定)早期退職時の手数料返金ルール(例:入社後〇カ月以内退職で〇%返金)
個人情報保護条項求職者の個人情報の取扱いについての規定

求職者との流れ

  1. 求職者から求人票に応募 or 登録
  2. キャリアカウンセリング・求人紹介
  3. 応募意思確認後,求人企業へ推薦
  4. 企業との面接・選考
  5. 内定・雇用契約締結(直接雇用)

紹介事業者は求職者と雇用契約を結びません。あくまで「職業紹介」を行い,雇用契約は企業との間で成立します。

2-3.人材紹介業での注意点とコンプライアンス

人材紹介は「有料で求職者を紹介できる」事業ですが,法律による規制が非常に多い分野です。適正に運営するための主な注意点を押さえておきましょう。

求職者から料金を取ってはNG(職安法40条)

求職者から手数料や登録料などの費用を徴収することは,原則として禁止されています。紹介料は求人企業側から受け取りましょう。

※ただし,一部の職業については,求職者から手数料を徴収できます。

紹介先の労働条件の明示

求人情報は正確に表示する義務があります(職安法5の3条)。虚偽表示は禁止です(例:給与を実態より高く書く/残業なしと偽るなど)。

個人情報の適正管理

求職者情報は職業紹介の目的以外に利用してはなりません。

苦情対応体制の整備

苦情処理体制を整備し,求職者・企業双方からの苦情に誠実に対応しましょう。

3.人材紹介事業に関する違法行為とリスク

ここでは,人材紹介で特に注意すべき「違反リスク」について解説します。知らずにやってしまうと,罰則や行政処分の対象になるため注意が必要です。

3-1.よくある違反事例

無許可営業

許可を取得せずに有料で紹介事業を行う行為。重い処罰の対象となります。

求職者からの違法徴収

求職者から手数料や登録料を徴収する行為。職業安定法で禁止されています。

虚偽求人

求人票に事実と異なる内容(給与,労働条件など)を記載する行為。企業・求職者双方に誤解やトラブルを招きます。

二重紹介

同一の求職者を複数の求人企業に同時推薦する行為。採用選考や契約段階での混乱・トラブルにつながります。

名ばかり紹介予定派遣

本来は労働者派遣に該当する業務を「紹介」として扱い,適切な法規制を回避しようとする行為。違法派遣とみなされるリスクがあります。

3-2.違反時の罰則

人材紹介事業で法令違反が発覚した場合,以下のような行政処分や刑事罰の対象となります。「知らなかった」「うっかりやってしまった」では済まされないため,日頃から法令遵守を徹底しましょう。

無許可営業

許可を取得せずに人材紹介業を行った場合,1年以下の懲役又は百万円以下の罰金が科されます(職業安定法第64条)。

求職者からの違法徴収

求職者から手数料や登録料を徴収した場合も,刑事罰が科される対象となります。

行政処分(許可取消し・業務停止命令)

重大な違反や繰り返しの違反が認められた場合,有料職業紹介事業の許可取消しや事業停止命令を受けることがあります。

一度許可が取り消されると,再取得はかなり難しくなるため,事業存続自体が困難になるリスクがあります。

損害賠償リスク

虚偽求人や不適切な情報管理により,求職者や企業に損害を与えた場合には,民事上の損害賠償請求が発生する可能性もあります。

4.まとめ

人材紹介(有料職業紹介)事業は,職業安定法に基づく許可制の事業です。

労働者派遣とは法律上・仕組み上まったく異なるサービスであり,正しい知識とコンプライアンス意識,適切な許可取得と運営体制の整備が求められます。

特に,求職者からの違法徴収や虚偽求人などの違反行為は重い罰則の対象となるため,常に最新の法令に基づいた適正な事業運営を心がけましょう。

社労士法人第一綜合事務所では,有料職業紹介事業の許可申請支援や社内規程の整備支援,運営時の法令に基づいたアドバイスなど,人材紹介事業のトータルサポートを行っております。

「新たに事業を始めたい」「許可申請をどう進めればよいか分からない」といったお悩みがありましたら,ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

社会保険労務士法人第一綜合事務所
社会保険労務士 菅澤 賛

  • 全国社会保険労務士会連合会(登録番号13250145)
  • 東京都社会保険労務士会(登録番号1332119)

東京オフィス所属。これまで800社以上の中小企業に対し、業種・規模を問わず労務相談や助成金相談の実績がある。就業規則、賃金設計、固定残業制度の導入支援など幅広く支援し、企業の実務に即したアドバイスを信念とする。

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