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人事労務コラム

外国人雇用

公開日:2025.06.01

最終更新日:2025.06.01

【帰国する外国人向け】脱退一時金がわかりやすく理解できる!

【帰国する外国人向け】脱退一時金がわかりやすく理解できる!

外国人の皆さん,「日本で働いたあと,年金ってどうなるの?」そんな疑問を持ったことはありませんか?日本で働き,帰国する際には,年金を受け取らずに終わってしまう…と思っている方も少なくありません。しかし,実は,帰国後に一定の条件を満たせば,年金の一部を現金で受け取ることができる『脱退一時金制度』があります。
このコラムでは,脱退一時金の対象者や支給条件,申請方法,計算方法,さらには税金の扱いまで,社労士が解説します!

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1.脱退一時金とは?

脱退一時金とは,日本の公的年金制度(国民年金・厚生年金保険)に一定期間加入していた外国人が,帰国後にそれまで支払った年金保険料の一部を受け取ることができる制度です。

日本の年金制度は,原則として10年以上の加入期間がなければ年金受給権が発生しません。そのため,日本に一定期間滞在した外国人にとって,支払った保険料を「掛け捨て」としないための救済措置として機能しています。

それでは制度の内容を詳しく解説していきます。

1-1.脱退一時金の対象者

脱退一時金を受給できるのは,以下のすべての条件を満たす外国人に限られます。条件を満たしていない場合,申請しても却下されてしまうため,事前に確認をしましょう。

条件内容
国籍要件日本国籍を持っていないこと
加入期間要件国民年金,または厚生年金に6ヶ月以上加入していること
居住要件日本国内に住民票を持っていないこと(帰国していること)
受給要件まだ一度も年金を受給したことがないこと

対象者の具体例

  • 就労ビザ(例:技術・人文知識・国際業務など)で勤務していた外国人
  • 留学ビザで在籍していた学生
  • 特定技能ビザで一定期間働いていた方

対象外となるケース

  • 日本国籍を取得した方(帰化申請をし許可を得た方)
  • 永住者(永住ビザを保有する外国人)
  • 年金受給資格(原則10年以上の加入)を満たした方

※特に,永住ビザ保有者が対象外である点は見落とされがちなのでご注意ください。

1-2.脱退一時金の支給要件

年金被保険者でないこと

国民年金または厚生年金保険の被保険者資格を喪失していること

資格喪失日からの期間要件

最後に被保険者資格を喪失した日から2年以内に申請すること

住所要件

資格喪失時に日本に住所があった場合は,日本国内の住所を抹消してから2年以内に申請すること

これらの要件は,1つでも欠けると脱退一時金の支給対象外となります。また,「2年以内の申請期限」があることにもご注意ください。

帰国後,申請をしばらく先延ばしにすると受給権を失うリスクがあるため,速やかに脱退一時金の手続きを行うことお勧めいたします。

2.支給額の計算方法

脱退一時金の支給額は,加入していた年金制度によって計算方法が異なります。ここでは,国民年金と厚生年金保険それぞれの計算方法について詳しく解説します。

2-1.国民年金

脱退一時金(国民年金分)は,次の計算式に基づいて算出されます。

最後に保険料を納付した月が属する年度の国民年金保険料額 × 1/2 × 支給額計算に用いる数

ここで重要なのは,「支給額計算に用いる数」です。これは納付済期間に応じて以下のように定められています。

保険料納付済期間の月数支給額計算に用いる数
6ヶ月以上12ヶ月未満6
12ヶ月以上18ヶ月未満12
18ヶ月以上24ヶ月未満18
24ヶ月以上30ヶ月未満24
30ヶ月以上36ヶ月未満30
36ヶ月以上42ヶ月未満36
42ヶ月以上48ヶ月未満42
48ヶ月以上54ヶ月未満48
54ヶ月以上60ヶ月未満54
60ヶ月以上60

※支給額計算に用いる数は,加入期間が長いほど大きくなり,支給額も増加します。

計算例

具体的に計算してみましょう。以下のようなケースを例とします。

  • 最後の保険料納付:2025年4月(保険料額 17,510円)
  • 加入期間:24ヶ月

この場合,脱退一時金の金額は以下のようになります。

 17,510円 × 1/2 × 24ヶ月 = 210,120円

したがって,脱退一時金として210,120円が支給されることになります。

2-2.厚生年金

続いて,脱退一時金(厚生年金分)は,次の計算式に基づいて算出されます。

平均標準報酬額 × 支給率

ここで使われる平均標準報酬額とは,被保険者期間中の「標準報酬月額」と「標準賞与額(ボーナスに対する保険料対象額)」を合算し,それを被保険者期間の月数で割って求めた金額です。

つまり,単なる月給ではなく,ボーナスも含めた総合的な所得水準が反映されるため,正確な把握が重要です。

支給率と支給額計算に用いる数

加入期間に応じた支給率は,以下のとおり定められています。

厚生年金保険被保険者期間の月数支給率
6ヶ月以上12ヶ月未満0.5
12ヶ月以上18ヶ月未満1.1
18ヶ月以上24ヶ月未満1.6
24ヶ月以上30ヶ月未満2.2
30ヶ月以上36ヶ月未満2.7
36ヶ月以上42ヶ月未満3.3
42ヶ月以上48ヶ月未満3.8
48ヶ月以上54ヶ月未満4.4
54ヶ月以上60ヶ月未満4.9
60ヶ月以上5.5

※60ヶ月(5年)を超える場合でも,支給率は最大5.5となります。

計算例

こちらも具体例で支給額をシミュレーションしてみましょう。

  • 平均標準報酬額:40万円
  • 加入期間:24ヶ月

この場合の脱退一時金の金額は次のとおり計算されす。

 40万円 × 2.2 = 88万円

したがって,支給額は88万円となります。

3.申請に必要な書類と手続きの流れ

脱退一時金を受け取るためには,正確な書類をそろえ,所定の流れに沿って申請を行う必要があります。手続きを誤ると,支給遅延や最悪の場合は受給できなくなるリスクもあるため,慎重な対応が求められます。

ここでは,脱退一時金の申請に必要な書類と,具体的な手続きの流れについて,わかりやすく解説していきます。

3-1.申請に必要な書類

脱退一時金の申請にあたっては,以下の書類を準備する必要があります。不備のないよう,事前にしっかりと確認しましょう。

必要書類

脱退一時金請求書

日本年金機構のウェブサイトからダウンロードできます。
※英語・中国語・ベトナム語など,多言語版の請求書が用意されています。

パスポートのコピー

氏名,生年月日,国籍,署名,および在留資格が確認できるページの写しが必要です。

住民票の除票の写し

日本国内に住所を有しなくなったことを証明するために必要です。
なお,出国前に転出届を提出している場合には提出不要となります。

年金手帳または基礎年金番号通知書のコピー

加入履歴を確認するために必要です。

銀行口座情報

受取希望口座に関する書類(銀行名,支店名,口座番号,口座名義の情報)が必要です。
海外送金を希望する場合は,SWIFTコードの記載も必須となりますので,漏れなく記入しましょう。

3-2.手続きの流れ

脱退一時金の申請は,以下の手順で進めます。各手順ごとにポイントを押さえ,確実に手続きを行うようにお役立てください。手続きには一定時間かかりますが,流れに沿って申請を行い,脱退一時金を受け取れるようにしましょう。

※脱退一時金の申請は,「日本年金機構」に対して行います。在外公館(日本大使館・領事館)では受付できませんので,直接郵送手続きすることが必要です。

①書類の準備

先ほどご説明した上記の必要書類を揃えます。書類の不備がないか事前に確認をしましょう。

②請求書の入手と記入

脱退一時金請求書を入手し,必要事項を記入します。氏名,住所,年金加入期間,振込先の銀行口座情報などを正確に記入しましょう。

③書類の提出

準備した書類と記入済みの請求書を,日本年金機構に提出します。郵送または窓口で提出できます。郵送の場合は送付先が請求書に記載されていますので確認し送付するようにしましょう。

④審査

審査には,通常2~3ヶ月程度かかります。

⑤支給決定

審査の結果,支給が決定された場合は,支給申請から約4ヶ月後に,指定した銀行口座に脱退一時金が振り込まれます。

4.申請期限と注意点

申請期限は,日本を出国した日の翌日から2年以内です。2年を経過すると,脱退一時金を受け取る権利を失い,申請ができなくなりますので,帰国後は速やかに手続きを進めましょう。それでは,以下にて注意点を説明いたします。

注意点:脱退一時金に関して

老齢年金の受給資格期間

申請時に,年金の受給資格期間が120月(10年)以上ある場合,将来日本の老齢年金を受け取ることが可能となるため,脱退一時金を請求することはできません。(120月以上=脱退一時金対象外)

加入期間の通算

日本と社会保障協定を締結している国において年金制度に加入していた場合,その加入期間を日本の年金加入期間に通算できる制度があります。
この通算により受給資格期間が120月以上となった場合,脱退一時金の請求はできません。
※以下の対象国に滞在・就労経験がある方は,特にご注意ください。

 【日本が社会保障協定を締結している国(2025年3月現在)】

ドイツ,アメリカ,ベルギー,フランス,カナダ,オーストラリア,オランダ,チェコ, スペイン,アイルランド,ブラジル,スイス,ハンガリー,インド,ルクセンブルク, フィリピン,スロバキア,フィンランド,スウェーデン

請求者が死亡した場合

請求者本人が死亡しても,以下の親族が代わりに脱退一時金を受け取ることが可能です。
※本人が生前に請求書を提出している場合に限ります

受け取り可能な親族
  • 配偶者
  • 父母
  • 祖父母
  • 兄弟姉妹
  • その他三親等内の親族

最新情報の確認

脱退一時金の申請制度は,法改正や行政手続きの変更により随時更新されることがあります。申請前に,日本年金機構の公式ウェブサイトなどで,最新情報を確認しましょう。

以上のように,申請期限(帰国後2年以内)と各種注意点を確実に押さえた上で,早めに準備・申請を行いましょう万が一,不明点や不安な点がある場合は,日本年金機構や,社労士などの専門家に直接問い合わせることをおすすめします。

5.脱退一時金にかかる税金について

脱退一時金を受け取る際には,脱退一時金に対して所得税が課税されるという点に注意しなければなりません。せっかく受け取った金額が,想定よりも少なくなってしまうケースもあるため,事前に税金の仕組みを理解しておくことが非常に大切です。

ここでは,脱退一時金にかかる税金の基本ルールや,税金を取り戻すための手続き(還付申請)について,わかりやすく解説していきます。

5-1.課税対象と税率

脱退一時金を受け取る際には,所得税が課税される場合があります。課税対象と税率について,以下のとおり整理しておきましょう。

課税対象

脱退一時金のうち,厚生年金保険分が所得税の課税対象となります。一方,国民年金のみの加入者については,脱退一時金は課税対象外です。

税率

日本を出国した後,「非居住者」となった方が受け取る厚生年金保険の脱退一時金には,20.42%の所得税が源泉徴収されます。支給額がそのまま振り込まれるわけではないため,受取額に対する正しい認識が必要です。

還付を受けるための手続き

源泉徴収された所得税については,一定の手続きを行うことで還付を受けられる場合があります。具体的な流れは以下のとおりです。

①退職所得の選択課税による還付申告書の提出

提出先:日本国内における最終の住所地または居所地を管轄する税務署

②納税管理人の選任と届出

「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を提出する必要があります。納税管理人には,日本国内に住所または居所がある人物を指定します(特別な資格要件はありません)。

③(場合によって)確定申告の実施

帰国に伴い,年の途中であっても日本で確定申告を行うことで,所得税の還付を受けられるケースもあります。

5-2.必要な手続き

厚生年金保険に課税された税金は「退職所得の選択課税による還付のための申告書」を税務署に提出することで,源泉徴収された税金の還付を受けられる場合があります。

申告書の提出先は,日本国内における最終の住所地又は居所地を管轄する税務署です。申告及び還付金の受け取りのためには,「所得税・消費税の納税管理人の届出書」 を提出する必要があります(納税管理人の資格は「日本に住所地又は居所地を有すること」以外は特にありません)。

また帰国に伴い年の途中であっても,確定申告を行うことで所得税の還付を受けられる場合があります。

6.まとめ

今回は,脱退一時金の制度について解説しました。いかがでしたでしょうか。

脱退一時金を活用することで,あなたが日本で働いて納めた保険料は無駄にはなりません。この記事を参考に円滑に申請を行うことで確実に受け取りましょう。帰国後の生活を安心してスタートできるよう,応援しています。

社会保険労務士法人第一綜合事務所でもご相談を受けておりますので,お気軽にお問合せください。

この記事の監修者

社会保険労務士法人第一綜合事務所
社会保険労務士 菅澤 賛

  • 全国社会保険労務士会連合会(登録番号13250145)
  • 東京都社会保険労務士会(登録番号1332119)

東京オフィス所属。これまで800社以上の中小企業に対し、業種・規模を問わず労務相談や助成金相談の実績がある。就業規則、賃金設計、固定残業制度の導入支援など幅広く支援し、企業の実務に即したアドバイスを信念とする。

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