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人事労務コラム

外国人雇用

公開日:2025.06.01

最終更新日:2025.06.01

外国人雇用の退職・解雇・帰国,手続きと注意点を徹底解説

外国人雇用の退職・解雇・帰国,手続きと注意点を徹底解説

外国人労働者を雇用する企業にとって,退職・解雇・本国への帰国対応は避けて通れません。しかし,在留資格や労働法,社会保険の取り扱いなど,国内の日本人労働者とは異なる複雑な対応が求められ,適切な対応を怠るとトラブルや行政指導につながる恐れもあります。本コラムでは,人事労務の実務で押さえるべきポイントを社労士の視点から徹底解説します。

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1.外国人労働者の退職・解雇・帰国手続きとは?

外国人雇用において,退職・解雇・帰国に関する手続きは,単なる人事対応にとどまらず,在留資格や入管法,労働関係法令とも深く関係しています。日本人と同様の対応では思わぬトラブルや法令違反につながることもあり,企業側には慎重な対応が求められます。この章では基本的な流れや,押さえるべき実務上のポイントを詳しく解説します。

1-1.退職手続きの流れ

外国人労働者の退職手続きは,日本人と同様に基本的な流れは共通していますが,外国人特有の対応が必要になる場面もあります。

本章では,人事担当者が対応すべき退職手続きの流れについて,外国人労働者に特有のポイントも含めて解説します。

① 退職届の受理と意思確認

退職手続きは,本人からの退職届の提出とその意思確認から始まります。

なお,退職届の提出は法的な義務ではありませんが,後々のトラブルを防止するためにも,制度として整備し,提出を求める運用が望ましいです。

また,外国人労働者の場合,日本語での意思疎通に不安がある場合もあるため,「本当に自発的な意思による退職であるか」を慎重に確認しましょう。退職届には署名・捺印をもらい,日付・退職理由を明記してもらうことも忘れず対応しましょう。

② 雇用契約書に基づく最終出勤日の決定

雇用契約書や就業規則に記載された退職に関する条項を確認したうえで,最終出勤日を確定します(たとえば退職希望日の〇日前に申し出る必要がある等)。

加えて,本人の意向も丁寧にヒアリングしたうえで,双方合意のもとで最終出勤日を決定することが,後々のトラブル防止につながります。

外国人労働者の場合は,在留期間との関係や転職予定の有無によってもスケジュール調整が必要になることがあります。特に転職を予定している場合には,次の勤務先へのスムーズな移行も見据えた配慮が求められます。

③ 貸与品・備品の返却確認

パソコン・制服・社員証・ICカードなど,会社から貸与していた物品がすべて返却されているかをチェックします。
特に,在宅勤務中の退職者や,すでに帰国準備を進めている方に対しては,返却の手段やタイミングにも注意が必要です。

④ 離職証明書・雇用保険資格喪失届の作成

ハローワークに提出する「雇用保険被保険者資格喪失届」と,本人が失業給付を受ける際に必要な「離職票(離職証明書)」を作成し本人に渡します。

※これらの手続きは,退職後10日以内に行う必要があります。

⑤ 社会保険・住民税等の手続き

退職に伴い,健康保険・厚生年金保険の「資格喪失届」を年金事務所に提出します。

退職者の健康保険証の返却についても,企業が退職者から回収し,年金事務所に提出する書類とあわせて対応します。

住民税については,本人が帰国する場合でも未納分があれば,企業が「特別徴収」により清算する必要があります。所得税も年末調整対象外になることが多く,源泉徴収票の発行も忘れずに行いましょう。

参考:日本年金機構「従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き」

⑥最終給与・退職金の支払い

最終の給与計算では,未払賃金,残業代,年次有給休暇の未消化分などを正確に精算する必要があります。
企業の規定によって,退職金規定がある場合は,支給基準に則って退職金も支払います。

1-2.解雇手続きの注意点

外国人労働者を解雇する場合,在留資格との関係や,労働契約の解釈の違いなど,外国人特有のリスクも含まれるため,より慎重な対応が求められます。不当解雇が認定された場合には,解雇の無効や損害賠償請求,さらにはSNS等での情報拡散で企業の信頼失墜にもつながるため,社労士などの専門家と連携した対応が望ましいです。以下では,外国人雇用における解雇時の重要な注意点を整理します。

① 解雇の理由:合理性・社会通念上の相当性が求められる

労働契約法第16条では,「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」がなければ解雇は無効とされており,外国人労働者の場合も例外ではありません。

能力不足や勤務態度不良,事業の縮小等,その理由が文書で説明できるよう,人事記録や評価面談記録の整備が重要です。解雇通知書には,これらを簡潔に明記しましょう。

② 解雇予告と解雇予告手当の義務

労働基準法第20条により,30日以上前の解雇予告,または30日分以上の解雇予告手当の支払いが義務付けられています。

外国人労働者の解雇でも同様であり,即日解雇する場合には,必ず予告手当の支払いが必要です。また,「懲戒解雇」であっても,就業規則に明記され,本人に内容が周知されていなければ,無効と判断されるケースがあります。

③ 解雇理由証明書の交付義務

解雇された外国人労働者から請求があった場合は,遅滞なく「解雇理由証明書」を発行しなければなりません(労働基準法第22条)。

在留資格の更新や転職活動にも使用されることがあるため,証明書の記載内容に曖昧さがないよう注意が必要です。虚偽の記載や感情的な表現は厳禁です。

④ 不当解雇への対応リスク

外国人労働者が解雇に不服を申し立てた場合,労働審判や訴訟,労働局への申告,SNSでの炎上など,企業にとって大きな負担となる可能性があります。「証拠が残っていない」「通訳が不十分だった」など,コミュニケーション不全がトラブルの温床になることも少なくありません。

社労士・弁護士と連携し,事前の相談・文書化・対応マニュアルの整備をしておくことが,企業防衛につながります。

⑤ 在留資格との関係性にも注意

企業側が入管庁への「契約終了届出」を怠ると,行政指導が入る等のリスクもあるため,解雇後の対応まで視野に入れた準備が必要です。

また,解雇された外国人労働者は,在留資格の更新が困難になったり,在留期間の途中での資格を失うなど,法的な影響を受ける可能性があります。

そのため,退職後に引き続き日本に滞在することを希望する外国人本人は,「在留資格の変更」や「就職活動のための在留資格取得」など,個別に出入国在留管理局での手続きが必要になります。

※会社として,こうした状況に応じた説明や案内を行い,適切にサポートできる体制を整えておくことが望ましいです。

解雇は,法的にも感情的にもデリケートな問題であり,外国人労働者であっても「日本の労働法の保護対象」であることを忘れてはなりません。解雇の正当性を裏付けるための記録管理と,状況によっては社労士や弁護士などの専門家にサポートを依頼することもおすすめします。

1-3.帰国時の手続き

外国人労働者が退職し,日本を離れて母国へ帰国する際には,在留資格・生活・税務・社会保険等の複数の分野にまたがる手続きが必要です。これらは外国人本人にとって大きな負担であるだけでなく,企業としても「外国人雇用に対する責任」を果たすうえで,適切な対応が求められます。

① 在留資格と滞在期間の確認

退職後の在留資格の取り扱いは,今後の外国人の在留状況にかかわるため重要です。たとえば「技術・人文知識・国際業務」などの就労系ビザは,就労先を失うと在留資格を喪失するリスクがあります。

企業は本人の在留資格を確認し,出入国在留管理庁に対して,「中長期在留者の受入れに関する届出(契約終了時)」を,契約終了日から14日以内にオンラインまたは書面で提出する義務があります。

参考:出入国管理庁「中長期在留者の受入れに関する届出」

【届出後に滞在できる日数】
契約終了の届出後,在留資格を喪失した場合であっても,出国準備や再就職活動等のために最大で原則「在留資格の有効期限まで」または「資格喪失から最長90日間」までの滞在が認められる場合があります(在留資格や個別事情によって異なります)。
※ただし,継続的に在留を希望する場合は,速やかに「在留資格変更許可申請」等の対応が必要です。

② 航空券の手配と費用負担

帰国のための航空券の手配は,雇用契約書や労働条件通知書に記載された内容に従って対応します。
「特定技能」など一部の在留資格では,雇用主が帰国費用を負担することが義務付けられているため,契約内容と制度のルールを照らし合わせて,誤りのない対応が必要です。

③ 住居・ライフラインの解約サポート

会社が住居を手配していた場合,解約手続きや退去日の調整,敷金返還等の対応が必要です。
また,本人が契約している場合でも,水道・ガス・電気・携帯電話等の解約について,日本語での手続きが難しいケースもあり,企業がサポートすることでトラブルを未然に防ぐことができます。

④ 市区町村への転出届・マイナンバー返納のサポート

帰国前には,市区町村役所での転出届や国民健康保険・国民年金の脱退手続き,マイナンバーカードの返納が必要です。

※一時帰国では返納不要な場合もあるため,帰国が「一時」か「永続」かを踏まえて判断しましょう。不安な場合は,お住まいの市町村役場に問い合わせを行うこともおすすめです。

⑤ 税金・社会保険の精算と還付申請

退職時に未納分の住民税や所得税がある場合は,企業が特別徴収により精算します。
また,厚生年金に加入していた外国人は,一定の条件を満たせば「脱退一時金」の申請が可能です。帰国後の本人の銀行口座への振込になるため,申請書類の準備や受け取り口座の設定支援も重要です。

⑥ 空港での出国手続きサポート

空港では,出国審査時に「在留カードの返納」が義務付けられています。

企業側で退職説明時にこの点を案内し忘れると,入国管理上の記録に不備が生じる可能性もあります。説明資料を多言語で用意しておくと安心です。

2.外国人労働者の退職・解雇・帰国でよくあるトラブルと対策

外国人雇用では,法令理解の不足や文化・言語の違いにより,トラブルが発生するリスクがあります。この章では,外国人労働者との契約終了時に特に起こりやすいトラブル事例を取り上げ,社労士の視点でポイントを解説します。

2-1.トラブル事例①:不当解雇

事例

ある外国人労働者が,業務上のミスを理由に突然解雇されました。

企業側は「業務遂行能力に問題がある」と口頭で伝えたものの,能力不足を裏付ける評価記録や指導履歴もなく,解雇通知書も交付されていませんでした。本人は不当解雇であるとして,労働審判を申し立て,最終的に解雇は無効と判断され,未払い賃金と慰謝料の支払いを命じられました。

企業にとってのリスク

  • 解雇の無効による復職命令や賃金支払い義務
  • 労働審判,訴訟への対応コスト
  • SNSや口コミでの企業イメージの低下

主な原因

  • 解雇理由の明文化・記録不足
  • 評価制度・就業規則の不備
  • 解雇通知や証明書の不備

適切な対策

  • 社労士や弁護士への事前相談
  • 指導記録や評価履歴の文書化
  • 解雇通知書・解雇理由証明書の適切な交付対応
  • 多言語での手続き説明や合意形成

2-2.トラブル事例②:未払い賃金

事例

外国人労働者が退職後に帰国した後,「残業代が支払われていなかった」と主張して,労働基準監督署に申告しました。
企業側はタイムカードの管理が不十分で,労働時間の記録が曖昧だったため,残業代の未払いを否定できず,追加賃金と遅延損害金を支払うことになりました。さらに,帰国した本人との連絡が困難となり,支払い手続きにも時間と手間がかかりました。

企業にとってのリスク

  • 未払い賃金の支払いと,遅延損害金
  • 労働基準監督署からの是正指導
  • 信用失墜・採用への悪影響

主な原因

  • 労働時間管理の不備
  • 多言語での賃金条件説明不足
  • 退職時の精算確認の欠如

適切な対策

  • タイムカード・シフトの正確な運用
  • 給与明細の内容説明(母国語での記載が望ましい)
  • 退職時に未払い賃金の有無を文書で確認
  • 社労士による定期的な給与チェック体制の導入

上記のように,外国人労働者の労務トラブルは「制度への理解不足」と「社内体制の不備」が主な原因です。トラブルを未然に防ぐには,定期的な労務監査や書類チェック,および多言語による労働条件の明示を行い,不安な点があれば社労士などの専門家に積極的に相談を行いましょう。

3.社労士に相談するメリット

外国人労働者に適用される労働基準法や入管法,社会保険制度など,複数の法制度が絡む複雑な領域です。誤った対応をしてしまうと,行政指導や労働争議,企業イメージの悪化など,取り返しのつかないリスクを招く可能性もあります。

こうした場面で心強い味方となるのが,労務管理と法令対応の専門家である社会保険労務士(社労士)です。この章では,社労士に相談・依頼することで得られる具体的なメリットについて解説します。

  • 適法な解雇理由の整備,通知文書の作成指導を行い,企業をトラブルから守ります。
  • 労働契約法や労働基準法,入管法等に精通した社労士の場合,外国人の不当解雇や未払い賃金といった法的リスクを事前にチェックすることも可能です。
  • ハローワークへの届け出,資格喪失手続き,離職票の作成など,煩雑な実務を正確に処理することができます。
  • 入管への契約終了届出等も含め,外国人雇用特有の手続きにも対応可能です。
  • 労働者との交渉方針について適切なアドバイスが可能です。
  • 労働局対応,労働審判・訴訟への備えなど,万が一に備えたリスクマネジメントが可能です。
  • 労働法・入管法の改正,裁判例などの最新情報を提供します。
  • コンプライアンス強化と企業運営の透明性向上に寄与します。
  • 業種・従業員構成・外国人比率など,企業の実情に即した対応策を提案することができます。
  • 外国人の雇用に強い社労士の場合,外国人特有の課題(言語対応,文化ギャップ)にも配慮したアドバイスが可能です。

社労士への相談には一定の費用が発生しますが,それ以上にトラブル防止・業務効率・法令遵守による企業価値の向上という大きなリターンが見込めます。

特に外国人雇用においては,「万一」ではなく「日常的な備え」として,専門家の活用を強く推奨いたします。

4.まとめ

外国人労働者の退職関連手続きは,単なる人事手続きにとどまらず,在留資格・労働法・社会保険・税務など複数の法制度が絡むため,外国人本人と企業,双方にとって複雑な分野です。

ただし,外国人雇用に強い社労士へ相談・依頼することで,これらの複雑な手続きや業務を円滑に,かつ法的リスクを抑えて実行することが可能になります。実務に即したアドバイスや書類整備,トラブル時の対応支援など,社労士を積極的に活用し,今後の外国人雇用をより安心・円滑に進めましょう。

本記事が貴社の「外国人雇用における退職・解雇・帰国」対応の一助となれば幸いです。

この記事の監修者

社会保険労務士法人第一綜合事務所
社会保険労務士 菅澤 賛

  • 全国社会保険労務士会連合会(登録番号13250145)
  • 東京都社会保険労務士会(登録番号1332119)

東京オフィス所属。これまで800社以上の中小企業に対し、業種・規模を問わず労務相談や助成金相談の実績がある。就業規則、賃金設計、固定残業制度の導入支援など幅広く支援し、企業の実務に即したアドバイスを信念とする。

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