
外国人を採用することが珍しいことではなくなってきている今,その手間と法的リスクを軽減する手段として注目されているのが“採用代行サービス”と“社労士のサポート”です。ただし,適当に選んでしまうとトラブルやミスマッチの原因にもなりかねません。
本コラムでは,外国人採用代行サービスの基礎知識から社労士との効果的な連携方法まで,現場経験豊富な社労士の視点でわかりやすく解説します!
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目次
1.採用代行サービスとは?
外国人採用を進めるにあたり,「採用代行サービス」の活用を検討する企業が増えています。自社だけでは手が回らない採用業務を外部の専門会社に任せることで,効率的かつ確実な採用が可能になるからです。ここでは,外国人採用代行の【業務内容】【費用相場】【選び方のポイント】について詳しく解説します。
1-1.業務内容
外国人採用代行サービスは,企業の人事担当者に代わって,採用に関する様々な業務を支援します。主な業務は以下の通りです。
- 求人広告の作成・掲載
各種求人媒体への出稿と原稿制作を代行 - 応募者の受付・管理
応募者情報の整理・スクリーニング - 書類選考や面接の調整・実施
スケジュール管理から面接官のアサインまで対応 - 内定者のフォロー
入社意思の確認や必要書類の案内など - ビザ申請のサポート ※対応可能な採用代行会社であるか要確認
- 入社後の研修プログラム提供 ※オプションとなるケースが多い
企業のニーズに応じて,すべてを一括して任せることも,一部の業務のみ依頼することも可能です。
これにより,採用担当者はコア業務に集中できるという大きなメリットがあります。
1-2.費用相場
採用代行サービスの費用は,依頼する内容や契約形態によって大きく異なります。主な料金体系と相場は,以下のとおりです。
- 求人広告掲載費用
数万円〜数十万円(媒体や掲載期間による) - 選考・面接代行費用
一般的に,1名あたり数万円程度 - 内定者フォロー
月額固定 or 成功報酬での設定あり - 成功報酬型
採用が決定した場合にのみ費用が発生(年収の20~35%程度が相場)
料金は会社ごとに大きく異なるため,複数社からの見積もり取得と費用内訳・追加費用の確認が必須です。
1-3.選び方のポイント
数ある採用代行サービスの中から,適切なパートナーを選ぶためのチェックポイントは以下の通りです。自社の状況と照らして,必要なサービスや採用代行会社の選定を行いましょう。
- 外国人採用の実績と専門性
ビザや労働関連法の知識を有し,外国人採用に慣れている会社を選びましょう。 - 対応力とサポート体制
担当者が柔軟に対応してくれるか,トラブル時の対応力も確認しましょう。 - 異文化理解・コミュニケーション能力
外国人とのやりとりが発生する場面でも,スムーズに対応できる体制かを見極めましょう。 - 費用対効果
費用の安さだけでなく,紹介される人材の質や採用成功率,アフターフォロー体制などの成果とのバランスで判断することが重要です。
2.社労士に依頼できる業務内容
外国人採用における「雇用後の管理」「労務リスク対策」「法令遵守体制の整備」は,社会保険労務士(社労士)の専門領域です。
在留資格(ビザ)申請や入管手続きといった“入国管理”業務は行政書士が主に対応しますが,雇用契約を結んだ後の労働条件整備,社内体制の構築,労働トラブル予防と対応は社労士にご相談ください。以下では,社労士に依頼できる具体的な業務内容をご紹介します。
2-1.相談業務
社労士は,外国人採用に関する様々な悩みや疑問に対して,的確なアドバイスを提供します。
- 就労制限や労働条件の適法性チェック
- 労働契約・雇用条件書の作成アドバイス
- 法改正に関する最新情報の提供
外国人雇用には,日本人採用にはない制度上の制限や注意点が数多くあります。企業の状況や業種に応じた最適な解決策を提示できるのが,社労士ならではの強みです。
在留資格の種類や取得条件は専門の行政書士がおすすめ!
日本は,外国人の就労活動を原則として制限しています。学歴や経歴によって就労できる範囲が限定されており,本人に高いスキルとやる気があっても採用できない場合も少なくありません。
知らずに採用してしまうと大きなトラブルにつながります。このようなリスクを避けるためにも,ビザ申請を専門に扱っている行政書士に相談することをおすすめします。
第一綜合グループの行政書士法人はビザ申請を専門に取り扱っています。雇用など労務に関することは社労士が,ビザに関することは行政書士が,ワンストップでご対応いたします!
※詳細は「行政書士法人第一綜合事務所」ホームページをご覧ください。
2-2.労務管理
社労士は,外国人労働者の労務管理体制の構築においても重要な役割を果たします。
- 労働時間や休日管理,賃金計算のサポート
- 社会保険・労働保険の手続き代行
- 外国人特有の労務リスク(文化差,言語差)に関する助言
- 就業規則の作成・改定
不適切な労務管理は,労働トラブルや行政指導のリスクを高めます。外国人特有の問題に精通している社労士が入ることで,安心・適法な雇用環境の構築が可能になります。
2-3.顧問契約のメリット
近年,社労士と継続的な顧問契約を結ぶ企業が増えています。スポットの業務ではなく,顧問契約とすることで,以下のようなメリットが得られます。
- 継続的な法令遵守のサポート
- 急な問題への迅速対応
- 最新の制度情報の提供と反映
- 手続き・相談がワンストップで対応可能
- 業務効率化とコスト削減の両立
特に外国人採用においては,法令遵守が求められる部分であり,制度の変更や行政の運用が頻繁に変わるため,常に最新情報を得て対応できる体制があると安心です。
3.採用代行と社労士の連携
外国人採用を成功させるためには,「採用のプロ」である採用代行会社と,「労務・人事管理の専門家」である社労士が連携することは重要な意味を持ちます。
3-1.連携のメリット
採用代行と社労士が連携することで,企業は「攻め」と「守り」両面のサポートを得られます。
採用代行の強み
- 求人票の作成・媒体選定
- 応募者管理・スクリーニング
- 面接設定・進行
- 採用マーケティング・広報活動
社労士の強み
- 外国人労働者向けの労働条件整備(雇用契約・就業規則)
- 社会保険・労働保険の手続き代行
- 外国人雇用に関する法令遵守とリスク対策
- 定着支援・研修・助成金申請サポート
上記の強みを合わせ,採用代行と社労士の連携により,企業は以下のようなメリットを享受できます。
- 採用活動と労務管理を同時並行で効率的に進行
- 労務リスクや行政指導の回避による法令遵守体制の構築
- 外国人労働者の定着率向上・トラブル予防
- 業務負担の軽減とコスト削減
3-2.連携を成功させるポイント
採用代行と社労士の連携をスムーズに進めるためには,以下のポイントを押さえておきましょう。
役割分担を明確にする
採用代行は「採用活動の入口」を,社労士は「雇用後の管理と定着支援」を担当します。どちらも外国人採用に関与しますが,目的とタイミングが異なるため,事前に役割を整理しておくことが重要です。
(例)外国人エンジニアを採用する企業が,採用代行に求人広告と面接設定を依頼し,採用決定後は社労士が雇用契約書と就業規則を英訳し,社会保険加入・研修設計まで担当。
情報共有とコミュニケーションを密に
採用過程や就労後の状況について,定期的な報告や進捗確認の場を設けることが重要です。
(例)飲食チェーンが,月1回の三者MTG(企業・採用代行・社労士)を設定。新たに入社した外国人スタッフのシフト管理や,社内ルールの理解状況を共有。
社労士が早期に残業管理の不備を指摘し,是正指導によりトラブルを未然に防いだ。
自社の課題やニーズを共有する
企業が,自社の業種特性・労働環境・外国人採用の目的を,事前に明確に伝えることが,適切な支援に繋がります。
(例)製造業で単純作業が多い現場において「作業中の指示が言語で伝わりにくい」課題を共有したところ,社労士が多言語の労働条件通知書・作業マニュアルの導入を提案。
採用代行も日本語スキルに応じた人材を紹介するよう基準を調整した。
進捗報告・課題の振り返りを定期的に実施
雇用後も,定着状況やトラブルの有無を確認し,必要に応じて改善策を講じていく体制が大切です。
(例)ホテル業で外国人スタッフの早期離職が続いた事例。採用後,社労士が面談を実施し,「評価制度が不明確」「相談先がない」といった課題を把握。
社内窓口の整備と定期面談を導入することで,離職率が大きく改善した。
3-3.採用代行サービス利用時の注意点
採用代行サービスはとても便利な手段ですが,相手任せにしすぎることでトラブルにつながるケースも少なくありません。ここでは,実際によくある失敗例や注意すべきポイントを解説します。
採用代行会社の「外国人採用経験」を必ず確認する
外国人採用は,日本人の採用とは異なる法的・実務的ハードルがあります。
ビザ申請や在留資格に関する知識がない採用代行会社を選んでしまうと,不適切な求人票や面接内容によってトラブルになる可能性があります。
対策
「過去に外国人採用を何人扱ったか」「ビザに関する連携体制はあるか」を必ず確認しましょう。
成果だけでなく「プロセス」も共有してもらう
「人材は紹介されたが,経緯や選考の根拠が不明」「面接が適当に行われていた」など,企業側が選考のプロセスに関与できていないケースも見られます。
対策
募集条件や人物像のすり合わせ,選考の途中経過報告の仕組みを導入しましょう。
成功報酬型でも「追加費用」には要注意
契約時の金額が安く見えても,書類作成や内定者フォロー,研修などで別途費用が発生する場合があります。
対策
「料金体系の内訳」「オプション扱いの業務範囲」を事前に確認・書面化しましょう。
自社の責任範囲を理解しておく
採用代行を使っても,最終的な責任は事業主(企業)にあります。
違法な就労や労務トラブルが発生した場合,「採用代行会社に任せていた」では済まないため注意が必要です。
対策
労働条件通知書や雇用契約書の最終確認は,必ず自社で行うか社労士に依頼しましょう。
4.まとめ
外国人採用が当たり前の時代になりつつある今,採用活動とその後の雇用管理には,高度な専門知識と実務対応力が求められます。
採用代行を活用することで,採用業務の負担を軽減しながら,自社に合った人材を効率的に確保することが可能です。一方で,採用後の労務管理・社会保険対応・トラブル予防などは,社会保険労務士(社労士)の専門領域です。
第一綜合グループでは,採用代行サービスと社労士による労務支援の両方を一体でご提供しており,採用から入社後の管理までをワンストップでサポート可能です。
「外国人採用を成功させたい」「採用後のトラブルを未然に防ぎたい」とお考えの企業様は,ぜひ一度ご相談ください。
この記事の監修者

社会保険労務士法人第一綜合事務所
社会保険労務士 菅澤 賛
- 全国社会保険労務士会連合会(登録番号13250145)
- 東京都社会保険労務士会(登録番号1332119)
東京オフィス所属。これまで800社以上の中小企業に対し、業種・規模を問わず労務相談や助成金相談の実績がある。就業規則、賃金設計、固定残業制度の導入支援など幅広く支援し、企業の実務に即したアドバイスを信念とする。