
仕事と育児の両立を支援するために設けられている「両立支援等助成金」。その中でも「育児休業等支援コース」は,企業が従業員の育児休業取得をサポートする際に活用できる助成金制度です。本記事では,この助成金の概要や受給条件,申請方法について詳しく解説します。
本コラムは2025年3月11日時点の情報です。助成金制度は年度ごとに見直しや変更が行われる可能性があるため,最新の情報を入手することが重要です。詳細は厚生労働省の公式ウェブサイトをご確認ください。
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1.両立支援等助成金とは?
はじめに,「両立支援等助成金」について基本的な内容を押さえておきましょう。
両立支援等助成金は,育児や介護と仕事の両立を支援する企業を対象とした厚生労働省の助成制度です。働きやすい環境を整え,従業員が安心して育児休業を取得できるよう促すことを目的としています。
近年,少子化の進行や働き方改革の推進により,企業の育児支援体制の整備が重要視されるようになりました。特に,育児休業を取得しやすくすることで,育児と仕事を両立しやすくし,優秀な人材の確保や職場定着率の向上にもつながるとされています。こうした背景があり,企業が積極的に両立支援を行うことが求められてきているのです。
ただ,支援したくてもそこまで余裕がないという企業も少なくありません。そこで,国としても助成金を設けて企業が支援しやすい環境を整えているというわけです。
「両立支援等助成金」にはいくつかのコースがあり,本コラムではその中の「育児休業等支援コース」にフォーカスして解説していきます。
2.育児休業等支援コースとは?
育児休業等支援コースは,従業員の円滑な育休取得・復帰をサポートする企業に助成金を支給する制度です。具体的には次の3つの活動に対して助成金が支給されます。
【助成金の支給対象】
- 育休取得時のサポート活動
⇒育児休業を取得する従業員のための業務引継ぎ体制の整備や代替要員の確保など - 職場復帰への支援活動
⇒復帰後の短時間勤務制度やテレワークの導入,研修の実施など - 育休取得率を向上させる活動
⇒男性従業員の育休取得を促進する取り組みなど
イメージしやすいように,具体的な例を2つご紹介します。
【IT企業の事例】
育休を取得するベテラン社員が円滑に休みに入れるように,業務マニュアルの整備と引継ぎ研修を実施しました。その結果,ベテラン社員は安心して育休に入ることができ,復帰後もスムーズに業務が再開できました。ベテラン社員が育休で不在となっても生産性を落とすことなく,むしろベテラン社員の業務ノウハウを広められたことで,結果的に生産性向上にも寄与しました。
【製造業の中小企業の事例】
これまで男性社員が育休を取得したことがなかったため,なかなか「取得第1号」となる社員が出てこない状況でした。話を聞くと『休むと残業代もつかないし,手取り額が減ってしまう』ことが一番の理由でした。そこで,男性社員の育休取得を促進するために,取得者への特別手当を支給する新たな制度を導入しました。これにより,育休を取得する男性社員が増加し,職場全体のワークライフバランスを向上させることができました。
3.助成金の受給対象となる企業
両立支援等助成金の給付を受けるためには,以下の条件を満たす必要があります。
【受給対象となる企業】
- 労働者を雇用している事業主であること
⇒雇用している従業員がひとりもおらず,事業主自身が育休を取得する場合は対象になりません。 - 就業規則等に育児休業に関する規定を設けていること
⇒「育休取得者の待遇保証」や「育休取得後の復帰支援策」など,育児休業に関する規定が明文化されていて,それが社内で適用できる状態になっている必要があります。 - 育休取得と復帰支援の計画を作成し,実施していること
⇒復帰者向けのOJT研修を実施したり,業務引継ぎのための体制を整えたりすることが求められます。 - その他,厚生労働省が定める基準を満たしていること
⇒申請タイミングで最新の基準を確認し,適用対象となっているか判断しましょう。
ちなみに,中小企業と大企業では助成額や要件が異なる場合があるため,自社の規模に応じた申請条件を事前に厚生労働省のウェブサイトや都道府県労働局に問い合わせて確認しておきましょう。
4.助成金の支給額
両立支援等助成金の支給額は,育休取得・復帰の支援内容,企業規模によって異なります。
中小企業 | 大企業 | |
---|---|---|
育休取得時の支援 | 285,000円 | 215,000円 |
職場復帰時の支援 | 285,000円 | 215,000円 |
男性の育休取得促進 | 570,000円 | 427,500円 |
また,育休復帰後の一定期間において,短時間勤務制度の導入やテレワーク制度の利用を促進する取り組みを実施した企業には追加の助成が行われる場合があります。
【商社の事例】
とある商社では,育休から復帰した社員のために,テレワークとフレックスタイム制度を導入しました。これにより,復帰後の社員が仕事と育児のバランスを取りながら働ける環境が整い,離職率が大幅に低下しました。
助成金の額は年度ごとに変更されるため,最新情報は厚生労働省のホームページでご確認ください。
5.助成金受給の申請方法
ここからは,助成金の申請~受給までの流れについて解説します。
【手続きの流れ】
- 育児休業等支援計画の作成・届出
- 計画に基づく支援の実施
- 支給申請書類の提出
- 審査・助成金の受給
申請には,就業規則や支援計画書,実施報告書などの書類が必要となるため,事前に準備を整えておきましょう。
特に,育児休業を取得する従業員に対して,スムーズな業務引継ぎを行うためのマニュアル作成やサポート体制の強化などを追加で求められる場合があります。また,育休から復帰した後の働き方についても,柔軟な働き方を支援する制度を導入することで,より助成金を活用しやすくなります。
6.両立支援等助成金「育児休業等支援コース」まとめ
本コラムでは両立支援等助成金「育児休業等支援コース」について解説してきました。
同助成金は,従業員の育児休業取得・復帰をサポートしたいと考えている企業にとって,とても有益な制度です。制度を活用することで,職場環境の整備が進み,従業員の定着率向上にもつながります。
また,助成金の申請には一定の手続きが必要ですが,社会保険労務士に相談すれば,申請手続きのサポートも受けられます。複雑な申請書類の作成や,計画の立案・実施をスムーズに進めるためにも,専門家の力を借りながら制度を有効活用することをおすすめします。
今後も育児と仕事の両立を支援する制度が拡充される可能性があるため,最新の助成金情報をチェックしながら,積極的に申請を検討しましょう。
社会保険労務士法人第一綜合事務所では,初回のご相談はいつでも無料ですのでぜひお気軽にご連絡ください。
この記事の監修者

社会保険労務士法人第一綜合事務所
社会保険労務士 菅澤 賛
- 全国社会保険労務士会連合会(登録番号13250145)
- 東京都社会保険労務士会(登録番号1332119)
東京オフィス所属。これまで800社以上の中小企業に対し、業種・規模を問わず労務相談や助成金相談の実績がある。就業規則、賃金設計、固定残業制度の導入支援など幅広く支援し、企業の実務に即したアドバイスを信念とする。