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人事労務コラム

助成金

公開日:2025.05.31

最終更新日:2025.05.31

障害者の正社員化を成功に導く!キャリアアップ助成金完全ガイド

障害者の正社員化を成功に導く!キャリアアップ助成金完全ガイド

障害のある方を正社員として迎え入れ,長く安心して働ける環境を整えたいと考える企業が増えています。その取り組みを後押しする制度のひとつが「キャリアアップ助成金」です。
本コラムでは,キャリアアップ助成金の中でも障害者の正社員登用を支援する「障害者正社員化コース」に焦点を当て,制度の概要から申請手続き,支給額,注意点までをわかりやすく解説します。

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1.キャリアアップ助成金とは?「障害者正社員化コース」の概要

障害者の正社員化を検討している企業にとって,キャリアアップ助成金は有効な手段のひとつです。キャリアアップ助成金の全体像と,「障害者正社員化コース」の目的や対象者について詳しく見ていきましょう。

1-1.助成金の目的と制度の背景

キャリアアップ助成金は,有期契約労働者,短時間労働者,派遣労働者といった非正規雇用の労働者のキャリアアップを促進するため,正社員化や処遇改善の取り組みを実施した事業主に対して助成する制度です。内容により申請するコースが分かれていますので,それぞれご紹介します。

①正社員化支援コース一覧

  • 正社員化コース
    有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換
  • 障害者正社員化コース
    障害のある有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換

処遇改善支援コース一覧

  • 賃金規定等改定コース
    有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を改定し3%以上増額
  • 賃金等共通化コース
    有期雇用労働者等と正規雇用労働者との共通の賃金規定を新たに規定・適用
  • 賞与・退職金制度導入コース
    有期雇用労働者等を対象に賞与または退職金制度を導入し支給(積立実施も含む)
  • 社会保険適用時処遇改善コース
    有期雇用労働者等を新たに社会保険に適用させるとともに収入を増加させる

上記のように様々なコースがありますが,「障害者正社員化コース」は,障害者の正社員化に特化しています。正社員化という名目にはなっていますが,勤務地限定正社員や,職務限定正社員または短時間正社員を含むため労働者にとっても無理のない範囲での転換が可能です。このコースが設けられた背景には,障害者の雇用促進と,企業の持続的な成長を両立させるという,重要な目的があります。

引用:厚生労働省「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)」

1-2.対象となる事業主と従業員

「障害者正社員化コース」の対象となるのは,障害者を正社員として雇用し,一定の条件を満たす事業主です。

事業主に関する条件

雇用保険の適用事業所であること

業種を問わず,労働者を雇用する事業であれば適用となります。
ただし,雇用されている労働者全員が雇用保険の加入条件(週20時間未満など)を満たさない場合は,助成金の適用となりません。

障害者の雇用管理に関する体制が整っていること

対象労働者に対する労働条件や勤務状況,賃金の支払い状況を明確にするため,就業規則,労働条件通知書,出勤簿,賃金台帳などの関連書類を整備していることが必要です。
また,キャリアアップに取り組むために必要な知識及び経験を有していると認められるキャリアアップ管理者の選定も必要となります。

事業主都合により,対象者を離職させていないこと

労働者の雇用転換を行った日前6ヶ月間と,転換後の6ヶ月間に事業主都合で離職させていないことが条件となります。

その他にも,労働保険料の支払いが滞っている場合や,過去1年に労働関係法令の違反を行った事業主は助成金を受給することはできませんので注意が必要です。

労働者に関する条件

雇い入れ時,または雇用転換を行った日に,以下のいずれかに該当する労働者であることが要件となります。

  • 身体障害者
  • 知的障害者
  • 精神障害者
  • 発達障害者
  • 難病患者
  • 脳の機能的損傷に基づく精神障害である高次脳機能障害であると診断された者

ただし,就労継続支援A型事業の利用者は対象とはならないため,注意が必要です。

また,支給申請日において離職していないことや,転換日から定年までの期間が1年以上あることも要件とされています。

就労継続支援A型事業とは?

一般企業での就労の難しい障害や難病のある方が,雇用契約を結んだうえで一定の支援がある職場で働くことができる福祉サービスです。作業に従事することで一定の給与をもらうことが可能です。
※雇用契約を結ぶため,労基法の適用があります(最低賃金の保証,社会保険の加入義務など)。

1-3.助成金の支給額と支給期間

助成金の支給額は,雇用する障害者の種類や,企業の規模によって異なります。下記にて詳しい支給内容を紹介します。

キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)助成内容

※( )内は中小企業以外の額 支給対象者1人あたり,上記の額が支給されます。

上記のように,支給対象者1人あたり,上記の額が支給されます。支給対象期間1年間のうち,最初の6か月を第1期,次の6か月を第2期といいます。ただし,この支給額が,各々の支給対象期における労働に対する賃金の額を超える場合には,当該賃金の総額が上限額となります。

このような助成金を活用することで,企業は障害者雇用の費用を結果的に抑えることができ,長期的な雇用に繋げやすくなります。キャリアアップ助成金は,障害者雇用を検討している企業にとって,大きなメリットをもたらす制度と言えるでしょう。制度の概要を理解しスムーズな障害者雇用を実現できるよう,助成金の申請に詳しい社労士などの専門家の活用も視野にいれることをお勧めいたします。

2.助成金の申請方法と必要な書類

「障害者正社員化コース」の申請をスムーズに進めるためには事前の準備や,正確に手続きを行うことが重要です

。ここでは,申請に必要な書類,具体的な流れ,そしてよくある質問とその回答について見ていきましょう。

2-1.申請に必要な書類リスト

申請にあたっては,以下の書類が必要となります。これらの書類は,厚生労働省のウェブサイトからダウンロードできます。添付書類については,自社で作成する必要があります。書類の準備を始める前に,リストを参考に抜け漏れがないか確認しましょう。

また,書類の作成や制度の適用要件に不安がある場合は,社会保険労務士などの専門家に相談・依頼することで,申請の確実性や効率を高めることができます。

厚生労働省ウェブサイトよりダウンロードする主な書類

  • キャリアアップ計画書
    (キャリアアップに係る取り組みの前日までに,都道府県労働局へ提出する必要があります)
  • キャリアアップ助成金支給申請書
  • 「障害者正社員化コース」内訳
  • 「障害者正社員化コース」対象労働者詳細
  • 「障害者雇用関係助成金個人番号登録届」

自社で作成する添付書類

  • 転換前後の労働協約または就業規則等
  • 対象労働者の転換前後の雇用契約書
  • 対象労働者の転換前後の賃金台帳および出勤簿
  • 障害者手帳の写し

上記書類は,原則として支給申請期限までに提出しなければ受理してもらうことができません。事前に書類リストをしっかりと確認し,不足がないように準備を進めましょう。

2-2.申請手続きの主な流れとポイント

申請手続きは,以下のステップで進みます。それぞれのステップで注意すべきポイントを押さえ,スムーズな申請を目指せるよう,準備を行いましょう。

1.対象労働者を雇用

障害者を有期契約労働者として雇用します。雇用契約の内容を明確にし,労働条件をしっかりと説明しましょう。

2.申請書類の準備

上記,厚生労働省のウェブサイトで確認をした必要書類を準備します。書類の作成には時間がかかる場合があるので,余裕を持って準備しましょう。
また,申請にあたって,以下の対応も必要となります。

  • 就業規則の改定・届出
  • キャリアアップ計画書の届出
  • 対象労働者を正規労働者に転換

3.支給申請

準備した書類を事業所の所在地を管轄する都道府県労働局に提出します。申請期限は正規雇用労働者に転換後,賃金を6ヶ月間支給した日の翌日から起算して2ヶ月以内となります。

4.審査と支給

提出された書類の審査が進み,要件を満たしていれば助成金が支給されます。電子申請を行った場合審査結果がメールで通知されます。

2-3.よくある質問と注意点

申請に関するよくある質問とその回答,そして注意すべき点を紹介します。

Q:助成金が支給されない場合とは,どのような場合ですか?
A: 以下のような場合には,支給対象とはなりません。
・雇用保険の適用事業所でない場合
・不正な手段で助成金を受けようとした場合
なお,不正な手段でなくとも労働者の処遇改善が図られていない場合など,本助成の趣旨・目的に沿った取り組みと判断されない場合にも不支給となります。


Q: 労働者の正社員転換において,必須とされる労働条件はありますか?
A: 正社員転換後に「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者に限り助成金の支給対象者となりますので,注意しましょう。


Q: 助成金の申請について相談したい場合はどこに問い合わせればいいですか?
A: 近くのハローワークや助成金を数多く取り扱っている社会保険労務士などがおすすめです。
社会保険労務士法人第一綜合事務所でも,助成金について無料相談を受け付けておりますので,お気軽にお問い合わせください。

3.正社員化に向けた具体的な取り組み

障害者の方を正社員として雇用することは,企業の成長にとっても,社会にとっても非常に意義のある取り組みです。しかし,どのように進めていけば良いのか,悩んでいる企業も少なくないでしょう。ここでは,障害者の方の正社員化を成功させるための方法を解説します。

3-1.正社員化の流れ 

障害者の方を雇用するにあたり,まずは現状を把握し,計画的に準備を進めることが重要です。以下に,具体的なステップをまとめました。

1.現状の把握と課題の明確化

まずは,自社の現状を客観的に把握することから始めましょう。障害者雇用に関する現在の自社の状況と課題,そして今後目指したい姿を明確にします。

2.求人計画の策定

どのような職種で,どのような能力を持った方を採用したいのかを具体的に計画します。募集要項を作成し,必要なスキルや経験,労働条件などを明示するようにしましょう。

3.採用活動の実施

障害者の方を雇用するにあたり,ハローワークや専門の求人サイトなどを活用し,自社に合った適切な人材を探します。
なお,契約社員求人に対して有期契約として採用した場合,当助成金の対象労働者となり得ます。

4.選考と内定

応募者のスキルや適性を見極めるために,面接や事前の職場体験などを実施します。また,選考基準を明確にし,公平な視点で選考を行いましょう。

5.受け入れ体制の整備

採用が決定したら,自社内の受け入れ体制を整えます。職場環境の整備,合理的配慮の提供,そして,周囲の従業員への理解促進などが重要です。なお雇用している障害者の方が容易に作業を行えるように,施設や設備環境を整える場合に助成金を受け取れる場合もあるのでぜひ活用してみましょう。

6.雇用後のサポート

雇用後も,定期的な面談や研修などを通じて,継続的なサポートを行いましょう。キャリアアップの機会を提供し,定着を支援することも大切です。

7.正社員転換の実施

一定期間の勤務を経て,本人の希望や能力,社内基準などを踏まえ,正社員転換を行います。
転換時には,就業規則や労働条件の明示,キャリアアップ助成金の活用可否なども確認しておきましょう。

3-2.効果的なキャリアアップ計画の策定方法

障害者の方のキャリアアップを支援することは,本人の成長だけでなく,企業の活性化にもつながります。効果的なキャリアアップ計画を策定するために,以下のポイントを押さえておきましょう。

1.個別の能力や希望に合わせた計画

一人ひとりの能力や希望を尊重し,個別のキャリアプランを作成します。また,企業の業務ニーズも考慮した上で本人の強みを活かし,成長を促せるような計画を立てましょう。

2.目標設定と評価制度

キャリアアップの目標を明確にし,定期的な評価制度を導入します。目標達成度を評価し,フィードバックを行うことで,本人にとっても成長を実感できるようにします。

3.研修や教育制度の充実

スキルアップのための研修や教育制度を充実させましょう。OJT(On-the-Job Training)やOFF-JT(Off-the-Job Training)を組み合わせ,効果的な教育を行うことが有効です。

4.メンター制度の導入

経験豊富な社員がメンターとなり,キャリアに関する相談やアドバイスを行います。また,キャリアプランの進行中に感じる不安やストレスに対応するための相談体制も整えておくことで,従業員にとっても安心して働ける環境を作り上げていきましょう。

5.ジョブローテーションの実施

さまざまな職種を経験できるジョブローテーションを実施し,スキルの幅を広げることも目指しましょう。
新たな知識や経験を得ることで,キャリアアップにつながります。

4.その他障害者雇用支援制度

キャリアアップ助成金(「障害者正社員化コース」)は,障害者雇用のサポートとなる制度ですが,この申請を行うだけですべてが完結するわけではありません。他の障害者雇用支援制度と組み合わせることで,より多角的なサポート体制を構築し,効果的な障害者雇用を促進することが可能になります。ここでは,他の助成金制度や相談窓口,支援機関について詳しく見ていきましょう。

4-1.その他の助成金制度の紹介

障害者雇用を支援する助成金は,キャリアアップ助成金だけではありません。企業の状況やニーズに合わせて,様々な助成金制度を活用できます。以下に,代表的なものをいくつかご紹介します。

特定求職者雇用開発助成金(特定求職者雇用開発コース)

障害者の方をハローワークまたは民間の職業紹介事業者を通じて採用し,一定期間雇用した場合に支給されます。最大で240万円の助成金を受けることができます。

障害者介助等助成金

重度の障害を持つ者を雇用する際に,介助者の配置や,特別な機器の購入などにかかる費用を支援する助成金です。例えば,視覚障害を持つ従業員を事務職として採用した際,拡大読書器やパソコン画面の読み上げソフトの貸与を受ける事ができることなどがあげられます。

なお,これらの助成金は,キャリアアップ助成金と併用できる場合もあります。それぞれの助成金の詳細や,自社に合った制度については,ハローワークや専門機関にご相談ください。

5.申請における注意点

キャリアアップ助成金を活用して障害者の方を正社員として雇用することは,企業にとっても社会にとっても大きなメリットがあります。しかし,申請に際しては注意すべき点もいくつか存在します。また,制度は常に変化しているため,今後の展望についてもご説明させていただきます。

5-1.申請時におけるよくある間違いと対策

助成金の申請において,よくある間違いとその対策を理解しておくことで,スムーズな申請が可能になります。以下に,よくある間違いとその対策をまとめました。

よくある間違いその①:必要書類の不備

申請に必要な書類は量が多く複雑となっています。提出書類に不備があると,審査に時間がかかったり,最悪の場合,助成金の不支給となる可能性もあります。

対策

厚生労働省のウェブサイトやハローワークの情報をよく確認し,必要な書類を全て揃え,記載内容に誤りがないか念入りにチェックしましょう。


よくある間違いその②:申請期限の遅延

助成金には申請期限が設けられています。どんなにがんばって準備したとしても,期限を過ぎてしまうと,申請を受け付けてもらえません。

対策

事前に申請期限を確認し,余裕を持って申請の準備を進めましょう。また,申請を行う際,電子申請の利用もおすすめです。


よくある間違いその③:支給要件の誤解

助成金の支給には,様々な要件があります。要件を満たしていない場合,支給を受けることができなくなります。

対策

助成金の対象となる要件をしっかりと理解し,自社が要件を満たしているか確認しましょう。不明な点は,ハローワークや社労士に相談することも有効です。


よくある間違いその④:不正受給

虚偽の申請や不正な手段で助成金を受け取ると,不正受給として発覚し,助成金の返還や加算金の支払いを求められることがあります。

対策

申請内容は正確に記載し,法令の遵守を徹底しましょう。自社の運用に間違いがないか不安を感じる方は,専門家に相談をすることなども視野にい入れてみてください。

以上,これらの注意点を踏まえ,確実な申請を行いましょう。判断に迷ったときや,自社が要件を満たしているか不安を感じる場合は,専門機関や私たちのような専門家にご相談ください。

6.まとめ

キャリアアップ助成金を活用した障害者雇用の促進について,多角的に説明してきました。助成金の概要から申請方法,具体的な取り組み,そして注意点に至るまで,障害者の方の正社員化に向けて知っておくべき事項はたくさんあります。

本コラムが,貴社における障害者雇用推進の一助となれば幸いです。

この記事の監修者

社会保険労務士法人第一綜合事務所
社会保険労務士 菅澤 賛

  • 全国社会保険労務士会連合会(登録番号13250145)
  • 東京都社会保険労務士会(登録番号1332119)

東京オフィス所属。これまで800社以上の中小企業に対し、業種・規模を問わず労務相談や助成金相談の実績がある。就業規則、賃金設計、固定残業制度の導入支援など幅広く支援し、企業の実務に即したアドバイスを信念とする。

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